不動産会社は合同会社で開業できる?|メリット・デメリットと向いているケースを解説

不動産会社は合同会社で開業できる?|メリット・デメリットと向いているケースを解説

「設立費用が安い合同会社で不動産業を始めたい」

「でも信用面で不利にならないか」

法人化を決めた人が次に悩むのが、株式会社と合同会社のどちらにするかです。

結論として、不動産会社は合同会社でも問題なく開業できます

宅建業免許も合同会社で取得でき、設立費用は株式会社の半額以下。

ただし、高額取引が中心の不動産業では信用面のハンデが実務に影響する場面もあります。

本記事では、合同会社で不動産業を営むメリット・デメリット・向いているケース・信用面を補う方法まで実務目線で整理します。

なお、株式会社での開業を検討している場合は株式会社で不動産開業する方法の記事を、そもそも個人事業主と法人のどちらにするかで迷っている場合は別記事をあわせて確認してください。

不動産会社は合同会社でも宅建業免許を取得できる

「不動産業は株式会社でないとできない」という誤解がありますが、合同会社でも宅地建物取引業免許を取得できます

法律上、合同会社で不動産会社を設立することに何の問題もありません。

合同会社(LLC)は2006年の会社法施行で導入された法人形態で、出資者全員が経営に参加し、利益配分を自由に決められるシンプルな組織です。

宅建業免許の要件(専任宅建士の配置・事務所要件・欠格事由なし)は株式会社とまったく同じで、形態による有利・不利はありません。

合同会社で不動産業を営む4つのメリット

①設立費用が株式会社の半額以下

合同会社の設立費用は約6〜10万円(登録免許税6万円+定款印紙代等)。

株式会社は約25万円かかるため、15万円以上の節約になります。

項目合同会社株式会社
登録免許税6万円15万円
定款認証不要5万円
設立費用合計約6〜10万円約25万円
荒川 竜介
宅地建物取引士

定款認証が不要なため、設立までの期間も短く、独立を急ぎたい人に向いています。

②経営体制の自由度が高い

合同会社は取締役会の設置義務がなく、役員任期の更新も不要です。

株式会社では役員任期ごとに重任登記(約1万円)が必要ですが、合同会社にはこれがありません。

少人数で柔軟に経営したい個人起業家に合っています。

③利益配分を柔軟に決められる

合同会社は出資額に比例せず、社員間の合意で利益配分を自由に決められます

共同経営する場合、出資額が少なくても貢献度が高い人に多く配分する、といった調整が可能です。

④維持コストが低い

合同会社は決算公告の義務がなく、役員の重任登記も不要

株式会社より毎年の維持コストと事務手間が少なく、小規模で長期的に経営するには合理的です。

合同会社で不動産業を営む3つのデメリット

①知名度・信用度が株式会社より低い

合同会社は社会的認知度がまだ低く、顧客や取引先に「規模が小さい会社」という印象を与える場合があります。

3,000万円の物件売買・賃貸オーナーとの管理契約など高額・長期の取引が中心の不動産業では、この信用差が実務に影響することがあります。

特に対BtoB(法人顧客・大手不動産会社との取引)では、「合同会社とは取引しにくい」という相手も一部に存在します。

②融資・取引で不利になる場面がある

銀行融資の審査や法人顧客との契約では、株式会社のほうが安心感を持たれる傾向があります。

合同会社だから融資が通らないわけではありませんが、信用面でわずかなハンデになる場面はあります。

ただし、開業初期は日本政策金融公庫が主軸になるため、合同会社でも融資調達に大きな支障は出にくいのが実態です。

③上場できず将来の拡張性に制約

合同会社は株式公開(上場)ができず、株式発行による資金調達もできません。

将来的に支店展開・大規模化・上場を視野に入れるなら株式会社が適しています。

ただし、後から合同会社→株式会社への組織変更は可能なので、小さく始めて必要になったら変更する選択肢もあります。

合同会社で不動産開業するのに必要な資金

合同会社は設立費用が安いものの、不動産業の開業費用全体は株式会社と変わりません

形態に関わらず、宅建業特有の費用が発生します。

項目金額目安
合同会社設立費用6〜10万円
宅建業免許登録税9万円(知事免許3.3万円の場合も)
保証協会加入費100〜180万円
事務所費用・備品100〜250万円
広告宣伝費20〜30万円
開業時運転資金200〜300万円
合計約450〜700万円

設立費用は株式会社より安いものの、保証協会の分担金が大きく、総額では500万円以上かかるのが一般的。

設立費用の差(約15万円)は全体から見れば小さいため、「設立費用の安さ」だけで合同会社を選ぶのは判断材料として弱いです。

荒川 竜介
宅地建物取引士

資本金は会社法上1円でも設立できますが、信用確保のため最低100万円、できれば300万円以上が望ましいラインです。

不動産会社は合同会社と株式会社、どちらで開業すべきか

不動産業での選択基準を整理します。

合同会社が向いているケース

  • 1人〜数人で小規模に始める
  • 地域密着で堅実に経営したい
  • 設立・維持コストを抑えたい
  • 上場・大規模展開は考えていない
  • BtoC(個人顧客)中心の賃貸仲介など

株式会社が向いているケース

  • 将来的に従業員を増やし支店展開する
  • 法人顧客・大手とのBtoB取引が中心
  • 銀行融資・資金調達を積極的に行う
  • 売買仲介・買取再販で信用力が売上に直結する
  • 上場や事業承継を視野に入れている

判断の軸は「事業規模と信用力の必要性」です。

1人開業・地域密着・賃貸中心なら合同会社で十分。売買仲介中心・BtoB・拡大志向なら株式会社が無難です。

株式会社の詳細は株式会社での開業記事を参照してください。

合同会社の信用面のハンデを補う3つの方法

合同会社を選ぶ場合、信用面のデメリットは工夫で補えます。

①HP・実績で「信頼できる会社」を示す

組織形態以上に、実態の信頼性が重要です。充実したHP・代表者の経歴・取引実績・口コミを示すことで、「合同会社だから不安」という印象を覆せます。

②宅建士資格・専門性を前面に出す

代表者の宅地建物取引士資格・実務経験・専門分野(相続・投資・空き家など)を明確に打ち出すことで、組織形態よりも「専門性のある会社」として認識されます。

③地域密着の営業で信頼を積み上げる

地域での評判・紹介ネットワークは、組織形態を超えた信頼の証明になります。地元での実績を地道に積むことで、合同会社でも安定した経営基盤を築けます。

合同会社での不動産開業でよくある5つの失敗パターン

①設立費用の安さだけで合同会社を選ぶ

設立費用の差は約15万円。開業総額500万円超から見れば小さい差です。

事業規模・信用力の必要性で判断すべきです。

②BtoB中心なのに合同会社を選ぶ

法人顧客・大手との取引が中心なら、信用面で株式会社が有利。

業態を考えずに設立費用だけで選ぶと、後で信用面のハンデに苦しみます。

③資本金を1円にして信用を落とす

会社法上1円で設立できますが、資本金が極端に低いと融資・取引で信用を損ねます。

最低100万円、できれば300万円以上を。

④将来の拡張を考えずに合同会社を選ぶ

上場・大規模展開を視野に入れているなら最初から株式会社が無難。

ただし後から組織変更も可能なので、確定でなければ合同会社スタートも選択肢です。

⑤信用補強策を取らずに放置する

合同会社のハンデを工夫で補わず放置すると、デメリットがそのまま響きます。

HP・実績・専門性で信頼を示す努力が必要です。

合同会社での不動産開業に関するよくある質問

Q
合同会社でも宅建業免許は取れる?
A

取れます。宅建業免許の要件(専任宅建士・事務所・欠格事由なし)は株式会社と同じで、形態による有利不利はありません。

Q
合同会社だと融資は不利?
A

開業初期は公庫融資が主軸のため、大きな支障は出にくいです。ただし民間銀行のプロパー融資や法人取引では、株式会社のほうが信用面で有利な場面があります。

Q
設立費用はどれくらい安い?
A

合同会社は約6〜10万円、株式会社は約25万円。差は約15万円です。ただし不動産開業の総額(500万円超)から見れば小さな差です。

Q
後から株式会社に変更できる?
A

できます。合同会社から株式会社への組織変更は可能です。小さく始めて、事業拡大・信用が必要になった段階で変更する選択肢もあります。

Q
合同会社と株式会社、結局どちらがいい?
A

1人開業・地域密着・賃貸中心なら合同会社、売買仲介中心・BtoB・拡大志向なら株式会社が無難です。事業規模と信用力の必要性で判断してください。

まとめ

不動産会社は合同会社でも問題なく開業でき、設立費用の安さ・経営の自由度・維持コストの低さは大きなメリットです。

1人〜少人数で地域密着の経営を目指すなら、合同会社は合理的な選択肢です。

一方で、高額取引・BtoB・拡大志向の業態では、信用力で株式会社に劣る場面があります。

合同会社を選ぶなら、HP・実績・専門性で信用面のハンデを補う工夫が欠かせません。

設立費用の安さだけで判断せず、事業規模と信用力の必要性を軸に、自社に合った形態を選んでください。

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