コロナ禍によって変化する住まい探しニーズへの対応とは?(前編)

コロナ禍をきっかけにテレワークを利活用した在宅勤務を行う人が増加しています。

(株)パーソル総合研究所が行った調査によれば、テレワークを実施していた人を緊急事態宣言前後(2020年3月・4月)で比較すると、13.2%から27.9%に上昇し、緊急事態宣言が発出された7都府県に限ると38.3%となりました。

では、テレワークの利用が広がることで、住まい探しにどういった変化が出てくるのか。

生活者の住まい・暮らし方といった観点から不動産業界に与える影響を考えてみたいと思います。

1.テレワークをきっかけとした住まい探しの実態

テレワークをきっかけに住み替えを検討する人が53%

(株)リクルート住まいカンパニーが行った調査「テレワーク(リモートワーク)に関する意識・実態調査」(調査時期2019年11月23日〜25日)によれば、テレワークをきっかけに引っ越しを実施、もしくは実施意向があると回答した人は全体の53%という結果となっています。

テレワークの導入により、現状の住まいに何らかの不満・改善点が生じ、その解消のために住み替えを行おうとしていることが分かる結果と言えます。

テレワークをきっかけとした住み替えのモチベーションは生活コストの削減

次に、テレワークをきっかけとした住み替えのモチベーションについてみてみたいと思います。

第1位: 物価が安い(差分12%)
第2位: 住居費が安い(差分11%)
第3位: 防犯対策がしっかりしている(差分7%)
第4位: 徒歩や自転車の移動が快適だ(差分6%)
第5位: 犯罪が少ない(差分6%)

上記ランキングは、「テレワーク(リモートワーク)に関する意識・実態調査」と同じく(株)リクルート住まいカンパニーが行った「住みたい街ランキング(首都圏)2019」の調査結果を比較し、差分が大きかった項目をピックアップしています。

この比較を通じて言えることは、テレワークをきっかけとした住まい探しでは、物価の安さや住居費の安さを重視する傾向が強くなっており、住み替えによって生活コストを削減したいという意図がわかる結果と言えるでしょう。

テレワークをきっかけとした住まい探しでは、通勤時間が長くなることを許容する傾向

テレワークを行うことで、通勤時間・日数、出社時間に縛られない仕事の仕方が可能になります。

同調査においても「通勤時間が長くなっても引っ越しを検討する」という回答が57%となりました。

出社する回数が減ることで、一回あたりの通勤時間が多少増加することは許容するという判断をしていることが分かります。

なお、許容する限度は「10分〜20分」が17%で最多となっています。

2.テレワーカーが住まいに求めるものとは?

ここまでは物件の外部環境(立地・通勤時間・周辺環境など)とテレワークの関連性をみてきましたが、ここからは物件の内部環境(設備・居住スペースなど)とテレワークの関連性について考察してみたいと思います。

テレワークの不満は「オンオフの切り替え」「ワークスペース」

テレワークの不満(複数回答)では、「オンオフの切り替えがしづらい」が23%で最多、次いで「仕事に適した共用部(ワークスペース)が充実していない」、「仕事の資料/PCなどの置き場/収納スペースがない」が続いています。

テレワーク時の環境整備→「資料やPCを置く場所のスペースの整備」が約30%

テレワーク時の自宅の環境整備について(複数回答)では、「自宅を仕事に適した環境に整えている」と回答した割合は70%となりました。

また、既にテレワークを実施している方も、テレワーク促進時に環境整備を実施したいと回答した方のいずれも、整備する内容として「仕事用の資料、PC置き場など収納スペースを整備する」が約3割で最多となっています。

その他上位には、仕事用の設備やスペースに関連する項目が散見されます。

上記テレワークの不満を自宅の環境整備を通じて解消しようとしていることがわかる結果と言えるでしょう。

3.テレワークの普及によるニーズの変化に不動産業者はどのように対応すべきか

テレワークをきっかけとした住まい探しについて総括すると、

【1】職場との位置関係にとらわれない住まい探し
【2】賃料や住宅価格だけでなく、物件所在地周辺の物価などの生活コスト全般に留意
【3】自宅で働く上で必要な空間や環境の整備

上記3点に集約されます。

テレワークの普及によって、職場と自宅との通勤距離・時間が長くなることを許容していることから、生活者自身のライフスタイル(仕事、趣味、子育てなど)に合わせた住まい探しニーズが高まることが予想されます。

都心から通勤1時間程度のエリアで、ワークスペースを確保できる広めの物件のニーズが高まると予想されます。

他にも、今後顕在化していくことが予想されるものとして、移住や二拠点生活、ワークスペースに適した物件やインテリアの工夫、所在エリアのコワーキングスペースなどの問い合わせが増えることなどが予想されます。

ここ数年の働き方改革の流れで、間取りにワークスペースを配した物件や共用部にワークスペースやミーティングスペースを設けている物件が増えていますし、空き家に机と椅子を設置してコワーキングスペースで時間貸しするケースも増加しているようですので、新しいトレンドの動向を引き続き注視していく必要がありそうです。

後編では、移住や二拠点生活について論じていますので、以下のリンクから御覧ください。

※後編はこちら「コロナ禍によって変化する住まい探しニーズへの対応とは?(後編)」

【調査概要】
「テレワーク×住まいの意識・実態調査」2019年(リクルート住まいカンパニー)
調査対象:20歳-64歳の東京都+関東6県+山梨県+長野県在住の男女
調査時期:2019年11月22日~11月25日
調査方法:インターネット調査
調査サンプル数:1,098

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