【宅建業法】低廉な空き家等の売買・貸借における仲介手数料の特例(800万円以下)とは?

日本全国で社会問題となっている「空き家」。
不動産会社にとって、価格が安い空き家の仲介は、調査の手間ばかりかかって利益が出にくいという悩ましい側面がありました。
しかし、宅建業法(つまり不動産業界のルールブックということ)のガイドラインにより、一定の条件を満たす「低廉な空き家等」については、通常の仲介手数料(報酬限度額)に特例が設けられ、実費相当額を上乗せして受け取ることができるようになりました。
本記事では、売買価格「800万円以下」の物件の売買や、長期空き家の貸借における仲介手数料の特例ルールについて、初心者にもわかりやすく噛み砕いて解説します。
結論から言うと?「低廉な空き家等の特例」のキホン
結論として、価格が安い空き家や土地の売買・貸借の仲介をする際、事前に依頼者の承諾を得ることで、通常の法律で決められた上限額を超えて「調査などにかかった実費を含めた報酬」を受け取ることができるという特例ルールです。
これは、宅配便の「深夜・早朝の割増料金」に例えるとわかりやすいでしょう。
通常、荷物を運ぶ運賃(仲介手数料)は距離や重さで一律に決められていますが、道が険しい山奥や深夜の配達(調査に手間がかかる安い空き家)は、配達員(不動産会社)にとって割に合いません。
そこで、「少し手間賃を上乗せしてもいいですよ」というルールを設けることで、引き受けてもらいやすくしたのがこの特例の本質です。
そもそもなぜ特例ができたのか?空き家問題の実情
不動産の仲介手数料は、原則として「物件の価格」に比例して計算されます。
そのため、価格が非常に安い物件の場合、どれだけ不動産会社が汗水流して現地の調査を行っても、受け取れる報酬が数万円にしかならず、交通費や人件費を差し引くと赤字になってしまうケースが多発していました。
その結果、「儲からないから」という理由で不動産会社が空き家の仲介を敬遠し、社会に空き家が放置され続けるという悪循環が起きていました。
この状況を打破し、宅地建物取引業者(つまり不動産会社のこと)が適正な報酬を受け取りながら積極的に空き家流通に関われるようにするため、国土交通省の告示(つまり国が定めた公式なルールや基準のこと)によって特例が導入されたのです。
売買・交換における「800万円以下」の特例ルール
対象となる物件と計算の仕組み
売買や交換の媒介(つまりお客さまの間に立って契約をまとめる仲介のこと)において特例の対象となるのは、「800万円以下」の低廉な空家等(つまり価格の安い空き家や土地のこと)です。
ここでのポイントは、建物だけでなく「土地のみ」の取引でも対象となる点、そして現在の使用状況(空き家かどうか)は問わないという点です。
この特例を利用すると、通常の計算方法で算出した報酬の上限額に加えて、現地調査などの「当該媒介に要する費用」を勘案した金額を上乗せして受け取ることができます。
代理(つまり依頼者の代わりとして契約権限を持って取引を行うこと)の場合は、この特例によって算出された金額(媒介の場合の特例上限額)の2倍以内で報酬を受け取ることが可能です。
事前の説明と合意が絶対のルール
ただし、無条件に高額な手数料を請求できるわけではありません。
不動産会社は、この特例を利用して通常の計算額以上の報酬を受け取る場合、必ず「媒介契約の締結に際して、あらかじめ依頼者に対して報酬額を説明し、合意を得ること」が法律上のルールとして義務付けられています。
後出しで「実は特例を使って高くなります」と請求することは許されないため、注意が必要です。
貸借(賃貸)における「長期の空き家等」の特例ルール
借主ではなく「貸主」からの報酬が対象
売買だけでなく、貸借(つまりアパートなどの賃貸契約ということ)の仲介においても特例があります。
対象となるのは、依頼を受ける時点で「長期間にわたって使われていない」、あるいは「将来にわたり使われる見込みがない」宅地や建物です。たとえば、1年以上誰も住んでいない戸建てや、相続したまま放置される予定のマンションの一室などが該当します。
入居者を募集している一般的な賃貸アパートの空室は対象外です。
通常、賃貸の仲介手数料は「貸主と借主の合計で家賃の1.1ヶ月分以内」と定められています。
しかし特例を利用すると、以下のルールが適用されます。
| 対象者 | 受け取れる報酬の上限(特例利用時) |
|---|---|
| 貸主(大家さん)から | 最大で「家賃の2.2ヶ月分以内」まで受け取れる |
| 借主(お客さま)から | 通常通り「家賃の1.1ヶ月分以内」 (居住用は原則0.55ヶ月分以内)のまま |
つまり、借主への負担は増やさずに、調査や広告の手間がかかる「貸主側」からのみ、実費などを加味して多めに報酬を受け取ることができる仕組みです。
この場合も、貸主と借主から受け取る合計額の上限が2.2ヶ月分以内に収まる必要があります。
また、売買の特例と同様に、事前に貸主に対して報酬額を説明し、合意を得ておくことが必須です。
この特例ルールがあるメリット・デメリット
低廉な空き家等に関する特例ルールが定められていることには、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
不動産会社側
今まで赤字覚悟で敬遠しがちだった安い物件や古い空き家でも、人件費や調査にかかる実費を含めた適正な報酬を受け取れるため、ビジネスとして取り組みやすくなる。
お客さま(売主・貸主)側
少額な物件でも不動産会社がしっかりと調査や広告活動を行ってくれるようになり、買い手や借り手が見つかりやすくなる。
デメリット
不動産会社側
特例を利用するためには、事前の説明と合意が必須であり、通常とは異なる契約の段取りや事務処理(本当に長期の空き家かどうかの確認など)の手間が増える。
また、「費用を勘案して」という名目であるため、実際にかかってもいない法外な金額を不当に請求することは許されない。
まとめ:特例を正しく活用し、ビジネスと社会貢献を両立しよう
宅建業法における「低廉な空き家等の特例」は、不動産会社が少額物件を扱う際の経費倒れを防ぎ、社会に眠る空き家の流通を活性化させるための重要なルールです。
専門的な法律の知識ですが、この特例を正しく理解し活用することで、自社の利益を確保しながら、地域に放置された空き家問題の解決に貢献することができます。
日々の実務にしっかり落とし込み、クリーンで適正な取引を心がけましょう。
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