【宅建業法】申込金(預り金)の返還拒否は違法!キャンセル時の返還ルールを解説

【宅建業法】申込金(預り金)の返還拒否は違法!キャンセル時の返還ルールを解説

不動産の賃貸や売買の営業現場で、お客様から購入・入居の意思表示として受け取る「申込金」。

しかし、お客様の事情でキャンセルになった際、「すでに手続きが進んでいるので返せません」と返還を拒否していませんか?

実はこの行為、宅地建物取引業法(つまり不動産業界のルールブックということ)で固く禁じられている違法行為です。

本記事では、法律の知識がない新人営業担当者でもスラスラ読めるよう、申込金(預り金)の返還ルールと手付金との明確な違い、そして返還を拒否した場合のペナルティについて噛み砕いて徹底解説します。

結論から言うと?「申込金(預り金)の返還」ルールのキホン

結論として、お客様が契約前にキャンセル(申込みの撤回)を申し出た場合、不動産会社は契約前に受け取っていた申込金などの「預り金」を、いかなる理由があっても全額、速やかにお客様へ返還しなければならないというルールです。

これは、人気のレストランでの「順番待ちの予約」に例えるとわかりやすいでしょう。

満席のレストランで順番を待つために名前を書いただけで、まだ席に案内されておらず料理も注文していない状態なら、途中で「やっぱりやめます」と列を抜けても、お金を取られることはありません。

不動産の申込みもこれと同じです。

契約が正式に成立する前の「順番待ち・購入意思の表明」の段階で渡したお金は、契約をやめれば無条件でそのまま返ってくるのが当たり前、というのがこのルールの本質です。

そもそも申込金(預り金)とはどんなお金?手付金との違い

申込金(預り金)は「一時的なお預かり金」

不動産取引において、お客様が「この物件を買いたい(借りたい)」という意思表示をする際、他のお客様より優先して審査や交渉を進めてもらうための証拠として支払うお金を、申込証拠金その他の預り金(つまり一時的にお預かりしているだけのお金のことということ)と呼びます。

この段階ではまだ正式な売買契約や賃貸借契約は成立していません。

手付金は「契約成立の証」として解約時に放棄するもの

一方で、手付金(つまり契約成立の証として買主から売主へ支払われるお金のことということ)は、正式に重要事項説明を受け、契約書にサインをして契約が成立した際に支払うお金です。

手付金は解約手付(つまりそのお金を手放すことで契約をキャンセルできる権利を持ったお金のことということ)としての性質を持つため、契約後にお客様都合でキャンセルする場合には、手付金をペナルティとして放棄しなければなりません。

申込金と手付金は言葉が似ていますが、契約の前後どちらで支払うかによって、キャンセル時に返還されるか没収されるかが全く異なります。

名称支払うタイミング契約の成立キャンセル時の扱い
申込金(預り金)申込み時まだ成立していない無条件で全額返還される
手付金契約締結時成立している原則として返還されない(放棄する)

宅建業法で禁止される「預り金返還拒否」の具体例

宅地建物取引業法第47条の2第3項に基づく施行規則では、相手方が契約の申込みを撤回しようとする場合において、契約の申込み時に宅地建物取引業者が受領していた申込証拠金その他の預り金について、返還を拒むことを明確に禁止しています。

「手付金だから返せない」と嘘をつくのは違法

国土交通省のガイドラインによれば、預り金の返還拒否の悪質な例として、「預り金は手付となっており、返還できない」と主張して返還を拒む行為が挙げられています。

手付金として授受していないにもかかわらず、嘘をついてお客様のお金を没収しようとする営業手法は、完全な法律違反となります。

いかなる理由があっても一旦全額返還が鉄則

ガイドラインでは、預り金は、いかなる理由があっても一旦返還すべきであるという趣旨が明記されています。

  • 「すでにローンの事前審査に手間をかけたから」
  • 「大家さんに書類を回してしまったから」
  • 「事務手数料がかかっているから」

といった不動産会社側の都合を理由にして、預り金の一部を差し引いて返したり、返還を不当に先延ばしにしたりすることは一切認められません。

ルール違反した場合のペナルティと行政処分

「少しの金額だから」と甘く見て預り金の返還を拒むと、宅建業法違反として監督官庁からの厳しい行政処分が下されます。

  • 業務停止処分 宅地建物取引業法第65条に基づき、最長1年間の業務の全部または一部の停止が命じられることがあります。
  • 免許取消処分 違反が悪質であり情状が重いと判断された場合、宅地建物取引業法第66条に基づき、不動産業の免許そのものが取り消される(つまり会社として不動産営業ができなくなるということ)リスクがあります。

数万円〜数十万円の申込金を手元に残そうとしたばかりに、会社全体の営業を停止させる致命傷になり得るのです。

このルールがあるメリット・デメリット

預り金の返還ルールが法律で厳しく定められていることには、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

買主(お客様)側

とりあえず物件を押さえるために申込金を払った後でも、契約前であればいつでもペナルティなしで全額返金してもらえるため、安心して物件選びやローンの比較検討を進めることができます。

売主(不動産会社)側

このルールを遵守し、キャンセル時には快く返金する誠実な対応を徹底することで、お客様からの信頼を獲得でき、「この会社なら安心だから、また別の物件を探してもらおう」と次のビジネスチャンスに繋げることができます。

デメリット 売主(不動産会社)側

契約直前でお客様がキャンセルした場合でも申込金を違約金として没収できないため、それまでにかけた物件の調査費用や書類作成の経費、他の購入希望者を断ったことによる機会損失などを、すべて不動産会社側が被ることになります。

まとめ:申込金はお客様の大切な財産!速やかな返還を

宅建業法における申込金(預り金)の返還ルールのポイントは以下の通りです。

  • 契約成立前に受け取った申込金(預り金)は、キャンセル時に全額返還する義務がある。
  • 手付金として授受していないのに「手付金だから返せない」と嘘をついてはいけない。
  • いかなる理由があっても、申込みの撤回があれば一旦全額を返還するのが鉄則である。
  • 違反すると、最長1年の業務停止処分や免許取消処分などの重いペナルティが科される。

営業担当者にとって、契約直前でのキャンセルは非常に落胆するものです。

しかし、申込金はあくまでお客様から「一時的にお預かりしているだけのお金」にすぎません。

法律のルールを正しく理解し、キャンセル時にも速やかで誠実な返金対応を行うことが、クリーンな不動産業界の発展と自社の信用を守る第一歩となります

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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