【必見】実務者が見抜くべき「危険な不動産取引の兆候」と報復リスクを排した防衛策

首都圏の不動産価格高騰に、どれだけ外国人投資家などの影響が関与しているのか、その実態は明らかにされていません。
しかし、日本の不動産を取得する外国人の数が増加傾向にあることは各種調査で示されており、需要の拡大が市場に影響を与えている可能性を完全に否定することはできません。
このような投資マネーの流入が活性化する中で懸念されるのが、マネーロンダリングです。
誤解を受ける可能性が高いことを承知で申し上げれば、日本の不動産市場はマネーロンダリングの温床になり得るとして、悪い意味で世界的に注目を集めていると言えるのです。
そして、たとえ私たち不動産業者が善意・無過失であったとしても、結果として犯罪に関与してしまった場合の代償は極めて大きなものとなります。
金銭的損失にとどまらず、行政処分、信用失墜、風評被害、さらには一定期間の業務停止、最悪の場合には宅建業免許の取消しなど、事業継続そのものに深刻な影響を及ぼしかねません。
こうした危機的状況に対しては、国際的にも厳しい視線が向けられています。
2021年に公表された、主要各国のマネーロンダリング対応状況などを審査する政府間会合「FATF(ファトフ)」の第4次対日相互審査において、日本は遵守状況やリスク評価、対策の有効性などについて総体的に低い評価を受け、「重点フォローアップ国」とされたからです。

マネーロンダリングを企画する側から見れば、日本はセキュリティ対策の甘い、取り組みやすい国と映っているのかもしれません。
こうした状況を受け、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会や(公社)全日本不動産協会など不動産関係5団体で構成される『不動産業における犯罪収益移転防止法等に関する連絡協議会(以下、マネロン連絡協議会)』が発足され、保証協会会員向けに『反社会勢力データベースシステム(以下データベースシステム)』の提供を開始しました。

このシステムは、すべての不動産取引において網羅的に利用することを目的としたものではありません。
あくまでも取引相手に反社会的勢力の疑いが認められる場合に、その利用が推奨されているのです。
利用方法は極めて簡単です。
保証協会会員が申請者情報および照会対象者情報を入力し、その後、データベース運用事務局から送付される照会結果メール(パスワードを含め2通)を確認するだけです。

しかし、筆者の知る限り、このシステムを実際に利用している業者は極めて少数派です。
なかには、その存在自体を知らない業者や、名前を聞いたことがあっても利用経験のない業者が大半を占めているのです。
これが、不動産業界の抱える深刻な現状です。
本稿ではデータベースシステムの有用性とその限界を解説するとともに、契約締結後に反社・半グレ(近年、警察庁が定義した「匿名・流動型犯罪グループ【=トクリュウ】」を含む)当事者であることが発覚した場合、どのように契約解除へ持ち込むべきか、さらに逆恨みによる報復リスクをどのように回避すべきかについて、現場最前線における暴排交渉実務の実態と、その全内幕を明らかにしていきます。
データベースシステムの有用性と限界
マネロン協議会の発足やデータベースシステムが無償提供された背景には、2028年8月に予定されている第5次対日相互審査の存在があります。
日本は、前回審査の評価に対する汚名を払拭する意味でも、行政と民間が一体となって対策を講じる必要があるのです。
そして、前回審査において金融機関以外の特定事業者、すなわち私たち不動産業者に関しては、顧客管理や取引モニタリングの徹底が不十分であると指摘された事実を、私たちは理解する必要があります。
2025年6月27日付で国土交通省が、「犯罪収益移転防止法等に対する義務履行の徹底を求める事務連絡」を発出したのも、危機管理意識を強く持って欲しいとの要望があるからです。
では、この無償提供されたデータベースシステムは、私たち実務家にとってどこまで有用性があるのでしょうか。
意図しない犯罪への関与やそれによる被害を防ぐには、データベースシステムの限界を正確に理解しておく必要があります。
本システムが有する最大のメリットは、従来であればインターネットなどを利用して手ずから確認しなければならなかった反社チェックが、容易にできるようになったことです。
ですが、システムに収蔵されたデータは、主として新聞に掲載された逮捕情報に基づいています。
そのため、該当情報がないことをもって、照会者が反社会的勢力ではないことが確約されるわけではありません。
これが、データベースシステムの限界です。
そのため、照会結果が「該当無し」であっても、疑わしさが払拭しきれない時には、データベースシステムの利用をもって調査を終了してはなりません。
必要に応じて、警察機関もしくは各都道府県に設置された「暴力団追放運動推進センター(以下暴追センター)」に相談・確認する姿勢が必要です。
ちなみに、警察への照会と比較して、暴追センターへの相談は心理的なハードルが低いと言えます。
さらに、センターに収蔵されている情報は、警察との連携により蓄積された極めて高い信頼性が担保されたものです。

もっとも、暴追センターから得られる情報にも限界があります。
そもそも、反社会的勢力に関する情報は多様であり、すべての情報を単一の情報源によって把握できるわけではないからです。
さらに、日本では前科情報を一般公開する制度が設けられていない点にも留意が必要です。
一方で、過去に新聞やテレビ等で報道された事実については、その一部がインターネット上の記事やデータベースとして長期間保存されている場合があります。
そのため、公開情報を収集するデータベースシステムでは、暴追センターへの照会だけでは把握しきれない情報を確認できる可能性があります。
このように、データベースシステムと暴追センターは、それぞれ異なる情報源と特性を有しています。
したがって、反社会的勢力との関係の有無をより適切に確認するためには、いずれか一方に依拠するのではなく、双方を補完的に活用することが重要です。
軽率な行動は厳禁
前項で解説したように、データベースシステムと暴追センター、あるいは警察への相談を実施して反社チェックを実施したとしても、それだけ万全とは言い切れません。
警察庁組織犯罪対策部が公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、暴力団構成員の数は年々減少しており、令和7年度末時点(確定値)の構成員・準構成員合計は17,600人と、平成3年以降で過去最低を記録しています。
これは、暴力団対策法が施行された平成4年以降においても最小の水準です。

しかし、この数字だけをもって犯罪組織に関与する人間の総数が減少したと結論づけることはできません。
暴力団対策法の施行以降、反社会的勢力に表面上は所属しない企業舎弟や周辺協力者の存在に加え、近年では匿名・流動型犯罪グループ(以下、トクリュウ)の背景に暴力団関係者が関与している実態も指摘されています。
こうした状況を踏まえれば、警察庁が把握している構成員の減少は、必ずしも組織犯罪勢力そのものの縮小を意味するものではないことが分かります。
むしろ、従来のように明確な組織形態から離れ、より深く地下へ潜行しながら活動する形へと変化していると見るべきでしょう。

さらに近年では、国内で摘発されたトクリュウの「掛け子」グループが、賃貸マンションの一室を特殊詐欺の拠点として利用していたとの報道も散見されます。
こうした事例からは、犯罪組織による活動拠点確保の手口が極めて巧妙化している実態がうかがえます。
つまり、データベースシステムや暴追センターなどから得られる情報に該当しなかったとしても、それだけでは安心できないのです。
加えて、犯罪組織とは一見無関係に見える一般会社員や個人事業主を契約名義人とする、いわゆる「名義貸し」のケースも確認されています。
その場合、本人確認書類や属性情報に問題が見当たらず、通常の反社チェックだけでは見抜けない可能性があります。
もちろん、適切な確認さえ実施していれば、仮にチェックの網をかいくぐられたとしても、私たちに法的な責任が及ぶ可能性は低いといえるでしょう。
しかし、利害関係者からの信用低下を招くおそれがあり、賃貸の場合には物件所有者から媒介契約を解除される可能性があります。
では、巧妙な偽装によって反社チェックの網をかいくぐられ契約を締結してしまった場合、あるいは物件の引き渡し後に反社会的勢力との関係が発覚した場合、私たちはどのような対応を取るべきなのでしょうか。
もちろん、売買契約書や賃貸借契約書には暴排条項(反社会勢力の排除に関する特約)が設けられているのが一般的です。
そのため、取引の相手方が反社会的勢力に該当すると合理的に認定できる場合には、催告を要することなく契約を解除できるケースも少なくありません。
しかし問題は、その「該当するとの確信」をどのように得るかです。
そもそも、データベースシステムや暴追センターに情報がなく、さらには警察からも明確な回答を得られない場合、どのような方法で反社会的勢力との関係性を立証すれば良いのでしょうか。
むしろ、確実な証拠や法的根拠がない段階で、単に「疑わしい」という理由だけで解除を求めれば、事態がかえって深刻化するおそれさえあるのです。
相手方から「根拠のない言いがかりによって精神的苦痛を受けた」「社会的信用を毀損された」「不当な差別を受けた」と主張される可能性もあるでしょう。
さらに、法に抵触しない範囲での抗議や威圧的な要求、損害賠償や違約金請求の口実を与えてしまう危険性もあります。
筆者が相談を受けた案件では、正義感も強く実直な営業担当者が独断で相手方を追及した結果、激しい怒声や執拗な抗議を受け、精神的に追い詰められてしまったケースがありました。
疑わしいというだけで軽率な行動をとれば、企業防衛どころか、かえって自社や従業員を危険にさらす結果となりかねないのです。
今日では見かけない光景ですが、バブル景気の最盛期から崩壊後にかけては、媒介業者の事務所に反社会的勢力の関係者が大挙して押しかけたという話も決して珍しくありませんでした。
実際に筆者自身も、取り囲まれ恫喝された経験は一度や二度ではありません。
実務上においては、契約書に定められた暴排条項が万能ではないという問題もあります。
契約解除が可能であっても、すでに物件の引き渡しや入居が完了している場合には、現実に明渡しや退去を実現するまでに相当の時間と労力を要するからです。
つまり、本当に重要なのは契約締結後の対応ではなく、契約締結前の段階でいかに危険な兆候を察知し、リスクを回避するかにあるのです。
次章以降では、現場で実際に用いられている反社・半グレの見極め手法や、契約後に問題が発覚した際の具体的な対応手順、さらには逆恨みや報復リスクを回避しながら交渉を進めるための実務について解説していきます。
契約締結前に確認すべき危険信号
前章では契約締結前の段階において、いかに危険を察知することこそが重要であると結論づけました。
それでは、具体的にどのような点を注意すれば良いのでしょうか。
最初に強調しておきたいのは、反社会的勢力や半グレ、あるいは犯罪組織の関係者であるかどうかを、外見や職業、国籍、年齢などの属性で判断することはできないし、してはならないということです。
むしろ、先入観に基づく対応は差別や人権侵害につながるおそれがあるため、公平性を遵守すべき媒介業者としては厳に慎む必要があるのです。
実務上、最も注目すべきは人物そのものではなく、「取引の不自然さ」です。
例えば、本人確認書類は整っているにもかかわらず、契約の目的や利用実態についての説明が曖昧な場合です。
居住する人数についての説明が二転三転する、あるいは入居予定者の詳細を明らかにしたがらない、勤務先や収入状況、さらには従事している業務内容についての説明がおよそ曖昧である。
くわえて不自然に話題を変えようとする場合にも注意が必要です。
また、目的を明らかにしないまま契約の締結を急ぐ場合も警戒すべきでしょう。
もちろん、急いでいること自体が問題というわけではありません。
しかし、重要事項説明を真剣に聞こうとしない、あるいは質問に対して本人ではなく同席者が回答するような場合、さらには資金の出処について質問すると話題を変えようとするようなケースでは、実質的な契約当事者が別に存在している可能性も考えられます。
さらに、本人確認や追加資料の提出を求めた際の反応も重要な判断材料となります。
通常の顧客であれば、多少しどろもどろであっても、合理的な説明をしようと努めるものです。
しかし、過度に反発する、あるいは「私を信用できないということですか?」「時間に余裕がないので、早く契約してください」などと威圧的な態度を示す場合には、触れてほしくない事情を抱えている可能性を否定できません。

特に近年は、トクリュウグループによる拠点確保の手口が巧妙化すると同時に、資金獲得活動も多様化しています。
高齢者宅を狙い、家屋修繕や水廻り工事、住宅設備を提案するリフォーム訪問販売などを装い、実際には損傷箇所が存在しないにもかかわらず故意に家屋を損傷させ、それを修理すると称して高額な施工費を請求する悪質リフォーム詐欺もその一つです。
一見すると不動産取引とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、このような犯罪収益の獲得活動によって得られた資金が、犯罪拠点の確保や資金洗浄の手段として不動産に利用される危険性は否定できません。
だからこそ私たちは「反社データベースに該当しなかった」「暴追センターから特段の回答が得られなかった」という事実だけで安心してはならないのです。
重要なのは、取引全体を通じて違和感が存在しないかを確認することです。
しかし、複数の不自然な要素が重なったからといって、担当者が独断で判断し、何らかの行動に移すことは厳禁です。
誤った判断によってトラブルを招く可能性が高まるだけでなく、相手方が実際に反社会的勢力や犯罪組織の関係者であった場合には、逆恨みによる報復や威迫行為の対象となる危険性があるからです。
そのため、不自然な兆候が認められた場合には、拙速に契約を締結するのではなく、いったん判断を留保すべきです。
特に担当者個人の判断だけで結論を出してはなりません。
そのうえで、上司や管理責任者へ報告し、必要に応じて「疑わしい取引」として届出を行うのです。

犯罪収益移転防止法においては、疑わしい取引だからといって「契約を締結してはならない」との規定は設けられていません。
ですが、各都道府県で施行されている暴力団排除条例では、反社会的勢力とは経済的取引を行わないことが求められています。
そのため、反社会的勢力との関係が払拭しきれない案件に関しては、契約締結を見送るのが無難な対応だと言えるのです。
風評被害や社会的責任を問われるリスクを回避するためには、危険性が懸念される取引を安易に進めない勇気が必要です。
反社会的勢力であることを完全に見抜く必要などありません。
違和感を覚えたときには一旦立ち止まり、必要な確認を重ねることこそが重要なのです。
その冷静な判断が、自社と依頼者を守る最大の防衛策となります。
契約締結後に問題が発覚した際の対応手順と注意点
どれほど慎重に反社チェックを実施し、さらには商談や契約締結時に危険信号の察知に努めたとしても、すべてのリスクが排除できるわけではありません。
前章で解説したとおり、近年の犯罪組織は従来のような、比較的把握しやすい組織形態を成してはいません。
企業舎弟や一般人である周辺協力者、さらにはトクリュウグループなどを介して活動する傾向を強めています。
そのため、契約締結時点では何ら問題が見受けられなかったにもかかわらず、契約後に反社会的勢力との関係性が発覚するケースも十分に考えられるのです。
先述したように、売買・賃貸借契約書には暴排規定が盛り込まれているため、相手方が反社会的勢力であると合理的に認定できれば契約を解除できます。
しかし、「疑わしい」だけでは足りません。
かといって、「疑わしさを確信に変えるため問いただしたい」と考えて行動に移せば、事態を悪化させる危険があります。
相手方が無関係であれば名誉毀損や差別的取扱いを主張される可能性がありますし、本当に反社会的勢力や犯罪組織の関係者であった場合、逆恨みによる報復や威迫行為を招く危険性もあるからです。
そのため、契約締結後に疑わしさを裏付ける情報を得たとしても、担当者が独断で相手方へ接触する、あるいは解除を示唆するような行為は慎まなければなりません。
行動を起こす前に重要なのが、情報の整理と事実確認です。
これにより、法的に十分な根拠が存在するかどうかを慎重に見極める必要があるのです。
そもそも、売買契約書や賃貸借契約書に暴排規定が設けられていても、疑わしいだけで履行を拒絶できるとは限りません。
さらに、売買によって物件を引き渡し済みの場合には、売買契約書に「再売買の予約」を設けていなければ手続きが煩雑になります。
しかし、私たちが通常使用している各保証協会から提供されている売買契約書には暴排規定こそ盛り込まれているものの、再売買予約についての記載がなされていません。
そのため、国土交通省が推奨している下記条項例を参考に、再売買の予約に関する条項を規定しておくのも一つの方法です。
第Y条 (再売買の予約) 買主が前条第3項(反社会的勢力の排除に関する特約)の規定に違反した場合において、売主が買主に対して、第1号の金額から第2号の金額を控除した金額を売買代金として本物件を買受けることを書面にて申し入れたとき、売主を譲受人、買主を譲渡人として本物件の売買(以下、当該売買を「再売買」という。)に関する契約が成立する。
この場合、買主は、売買代金全額の受領と引き換えに、売主に対して完全な本物件の所有権を移転し、本物件を第三者の占有のない状態で引き渡さなければならない。
第一号.売主が指定した中立な第三者である不動産鑑定士による再売買時の本物件の鑑定評価額。
第ニ号.再売買のために売主が負担する費用(登記費用、裁判費用、弁護士費用、前号の鑑定費用、本物件を本物件引渡時の原状に回復する費用等)。
もっとも、再売買予約条項を規定していたとしても、それだけで問題が解決するわけではありません。
重要なのは、反社会的勢力との関係を疑わせる情報を得た段階で直ちに行動するのではなく、まず事実関係を整理したうえで、客観的な証拠の確保に努めることです。
例えば、警察からの情報提供、近隣住民からの苦情、賃貸物件や分譲マンションであれば管理会社からの報告などによって、犯罪行為の拠点として利用されている蓋然性が高いと判断される場合には、その内容を詳細に記録しておく必要があります。
- いつ、誰から、どのような内容の情報を得たか
- その情報は伝聞か、それとも客観的事実や資料に基づくものか
- 現地へ出向き確認した結果、相手方の言動や利用状況に不自然な点が認められたか
こうした事実を時系列で整理し、記録として保存します。そして、上司がいるのなら速やかに報告を行います。
この種の問題は、個人で判断すべきではありません。
上司や管理責任者への報告はもちろん、必要に応じて経営陣や顧問弁護士を交えて対応方針を検討すべき事案です。
これは、印象や推測ではなく、客観的事実によってのみ判断すべきだからです。
確証にまで至らない状態であっても、一定の客観的証拠が集まった段階で警察へ相談することも重要です。
しかし、警察が常に明確な回答をしてくれるとは限りません。
捜査上の理由から詳細な情報提供が行われないケースも少なくないからです。
そのため、得られた情報を総合的に評価しながら対応方法を検討する必要があります。
特に、自身はもとより従業員や売主など利害関係者の安全確保は重要です。
相手方との面談や交渉が必要となった場合でも、けっして単独では対応せず複数名で行い、必要に応じて弁護士や警察と連携しながら進めることが肝要です。
先述したように、筆者も反社組織に属する人間に囲まれ、恐怖を覚えた経験があります。
その経験から学んだのは、この種の案件においては決して単独で交渉してはならないということです。
多勢に無勢ではありませんが、安易な正義感に基づく単独行動は決して良い結果を生みません。
契約締結後、あるいは物件引き渡し後に問題が発覚した場合に求められるのは、正義感による単独行動ではありません。
事実を確認し、証拠を保全したうえで組織として判断することです。
そして、暴排条項による解除や法的措置は、根拠が十分に整った後に初めて検討すべき手段であることを忘れてはならないのです。
そもそもの話ですが、私たち不動産業者に求められているのは、自力で犯罪を暴く検察官や警察官のような役割ではありません。
したがって、正義感に後押しされた単独交渉は厳に慎む必要があるのです。
犯罪収益移転防止法に基づく本人確認や取引時確認を適切に実施し、疑義が生じた場合には契約自体を留保する慎重さが求められます。
また、契約締結後においても取引全体で不自然な点がないかを継続的に確認し、問題があると疑われる場合には組織として対応することが重要です。
そのためには、反社チェックが万能ではないことを理解しておかなければなりません。
しかし、適切な確認と記録、そのうえでの冷静な判断を積み重ねることで、自社と依頼者を犯罪利用のリスクから守ることは可能です。
重要なのは過信でも萎縮でもありません。
法令と実務に基づいた適切なリスク管理こそが、不動産業者に求められる最も重要な責務なのです。
まとめ
本稿で解説してきたように、本人確認やデータベースによる調査を徹底し、取引全体を俯瞰した結果、「疑わしさ」が払拭しきれない時には、取引を留保するのが最も安全な対応策です。
しかし、反社会的勢力やトクリュウグループによる活動は巧妙化しており、反社チェックやデータベースによる照会だけではリスクを完全に排除することはできません。
外見や言葉遣いなどで先入観を持つのは禁物であり、「疑わしさ」を見抜くこと自体が容易ではありません。
ですが、先述したように私たち不動産業者に求められているのは反社会的勢力を摘発することではありません。
物件が犯罪に利用されるリスクを低減し、依頼者と自社を守ることこそが重要なのです。
そのためには過信することなく、さらには必要以上に萎縮する必要もありません。
法令と実務に基づいた確認と記録を積み重ね、問題が生じた際には組織として冷静に対応する姿勢こそが求められるのです。
それこそが、不動産会社に課せられた最も重要なリスク管理の実践と言えるでしょう。
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