一時的な案内所・展示会にも専任の宅建士は必要?宅建業法上の設置ルール

一時的な案内所・展示会にも専任の宅建士は必要?宅建業法上の設置ルール

新築マンションのモデルルームや、週末に開催される不動産フェアなどのイベントにおいて、「数日間だけの一時的な案内所だから、宅建士を常駐させなくても大丈夫だろう」と軽く考えていませんか。

宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)では、メインの事務所だけでなく、一時的な案内所や展示会に関しても非常に厳格なルールが定められています。

この記事では、一時的な案内所における専任の宅建士の設置ルールや、事前に必ず行うべき届出の義務について、法律の知識がない初心者の方でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。

結論:契約や申込みの受付を行うなら、一時的な場所でも「専任の宅建士」が必須!

結論から言いますと、一時的な案内所や展示会であっても、そこで物件の契約を結んだり、申込みの受付を行ったりするのであれば、成年者である専任の宅地建物取引士(つまり事務所等に常勤して専属で働く不動産取引の専門家のこと)を最低1名以上配置しなければなりません。

これは、飲食店の「イベント出張販売」のようなものです。

普段営業しているお店から離れたお祭りの屋台であっても、そこでお弁当を調理して販売するなら、必ず「食品衛生責任者」を置かなければならないのと同じルールです。

出張先であっても、お客様と取引を行う以上はプロの責任者を常駐させる義務があるのです。

そもそもなぜ必要?案内所にも厳しいルールがある理由

不動産の取引は非常に高額であり、一般のお客様にとって人生を左右する大きな買い物です。

もし、不動産フェアの華やかな雰囲気や、抽選会の熱気に流されて、専門知識を持たないスタッフの勢いだけで契約してしまったら、後から大きな後悔やトラブルにつながりかねません。

そのため、宅地建物取引業者(つまり不動産会社のこと)は、お客様が冷静かつ安全に正しい判断ができるように、一時的な場所であっても、取引の最前線には必ずプロフェッショナルである宅建士を配置しなければならないと法律で決められているのです。

「専任の宅建士が必要な場所」とは具体的にどこ?

では、具体的にどのような場所で専任の宅建士の設置が義務付けられるのでしょうか。

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、細かく対象が規定されています。

不動産フェアや週末だけのモデルルームも対象に

契約の締結だけでなく、契約の申込み(つまり契約を締結する意思を表示すること)を受ける場所であれば、すべて対象となります。

この「申込み」には、物件購入のための抽選の申込みなど、その場で金銭のやり取りが発生しないものも含まれます。

具体的には以下のような場所が該当します。

  • 宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行う不動産フェア
  • 買い換えや住み替えの相談会
  • 一時に多数の顧客が対象となる抽選会
  • 週末にのみ営業を行う別荘の現地案内所やモデルルーム

「たった2日間のイベントだから」という言い訳は通用しません。短期間であっても、専任の宅建士を設置する必要があります。

複数業者による共同案内所の設置ルール

実際の現場では、複数の不動産会社が合同で1つの案内所を運営することがあります。

この場合、同一の物件について、売主である業者と媒介を行う業者が同じ場所で業務を行うのであれば、どちらか一方の業者が専任の宅建士を1名以上置けば、法律の要件を満たしたことになります。

しかし、不動産フェアなどのように、複数の業者がそれぞれ「異なる物件」を持ち寄って販売を行う場合には、各業者ごとに1名以上の専任の宅建士を置かなければならないため、注意が必要です。

契約や申込みの手続きを「行わない」なら不要

一方で、単に物件のパンフレットを配ったり、アンケートをとったりするだけのイベントブースであれば、そこは「契約や申込みを行う場所」には該当しないため、専任の宅建士を置く必要はありません。

【実践編】案内所を出すときに必要な2つの義務

案内所で契約や申込みの受付を行う場合、宅建士を連れて行くだけでは不十分です。

以下の2つの重要な義務を果たさなければなりません。

1. 業務開始前の「届出」(法第50条第2項)

案内所を設置する場合、あらかじめ(つまり業務を始めるより前に)、以下の情報を行政に届け出る義務があります。

  • 所在地
  • 業務内容
  • 業務を行う期間
  • 専任の宅建士の氏名

届出先は、自社が免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事と、その案内所の所在地を管轄する都道府県知事の両方です。

また、業務を行う期間は原則として最長1年とされており、引き続き同じ場所で業務を行う場合は、改めて届出を行う必要があります。

2. 公衆の見やすい場所への「標識の掲示」(法第50条第1項)

事務所と同じように、案内所などの業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に国土交通省令で定める標識(つまり宅地建物取引業者票という公式な看板のこと)を掲示しなければなりません。

これによって、お客様は「ここが正式なルールに則った安全な取引場所である」と確認することができます。

案内所における設置ルールが存在するメリット・デメリット

このような厳しいルールが存在することには、次のような意味があります。

項目内容
メリットお客様がイベント会場などの一時的な場所であっても、専門家である宅建士のサポートを受けながら、安全で適正な不動産取引ができるという大きな得があります。不動産会社にとっても、無責任な契約による後々のクレームや契約解除のトラブルを未然に防ぐことができます。
デメリット不動産会社にとっては、週末のイベントや短期の展示会であっても、必ず専任の宅建士のスケジュールを確保し、常駐させるための人件費や労力がかかります。また、事前の届出や標識の準備を怠ると、宅建業法違反として業務停止などの行政処分(つまり行政からの重いペナルティのこと)を受けるリスクがあります。

まとめ

一時的な案内所や展示会における専任の宅建士の設置ルールについて解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。

  • 契約や申込みの受付を行う案内所には、期間に関わらず専任の宅建士が1名以上必要である。
  • 金銭のやり取りがない抽選の申込みや、週末だけのモデルルームも対象になる。
  • パンフレットの配布やアンケートのみを行う場所であれば設置は不要である。
  • 業務を開始する前に、免許権者と所在地の都道府県知事への「届出」が必須である。
  • お客様が見える場所に、公式な「標識(看板)」を掲示しなければならない。

「一時的なイベントだから」という油断は、法令違反に直結します。

不動産業に従事する皆様は、出張先やイベント会場であっても宅建業法のルールが適用されることを正しく理解し、お客様に安心感を与える誠実な業務運営を心がけましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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