【実務解説】借地権付建物の売買・賃貸借における重要事項説明の調査範囲と記載方法

【実務解説】借地権付建物の売買・賃貸借における重要事項説明の調査範囲と記載方法

不動産取引において、借地権付建物(つまり他人の土地を借りて建てられた建物のこと)の売買や賃貸借は、通常の所有権の物件に比べて権利関係が複雑になりがちです。

そのため、重要事項説明(つまり契約前に物件の注意点を伝える取扱説明書ということ)において、どこまで調査し、どう記載して説明すべきか迷う宅地建物取引業者(つまり不動産会社ということ)の営業担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、宅地建物取引業法(つまり不動産業界のルールブックということ)に基づく、借地権付建物や借地権の存する宅地の売買・賃貸借における調査範囲と説明ルールを、初心者にもわかりやすく噛み砕いて解説します。

結論から言うと?借地権付建物の重説ルールのキホン

結論として、借地権付建物や借地権のある土地を取引する際は、売買・賃貸にかかわらず「借地権の内容」を必ず調査し、お客さまに説明しなければなりません。

土地の権利が誰にあるのか、どんな条件で借りているのかを明確にすることが法律上の義務となっています。

これは、レンタルしているゲーム機に、自分で買ったソフトを入れて遊んでいる状態に例えるとわかりやすいでしょう。

ゲーム機本体(土地)は他人のものですが、ソフト(建物)は自分のものです。

このセットを誰かに譲ったり貸したりするとき、「ソフトはあげるけど、ゲーム機本体はレンタル品だから毎月レンタル料がかかるよ」と事前に伝えないと、後で相手が困ってしまいますよね。

借地権の重要事項説明もこれと同じで、建物の裏にある「土地のレンタル契約」の内容を正確に伝えることが本質です。

そもそも借地権とは何か?

借地権とは、建物を建てる目的で他人の土地を借りる権利のことです。

土地を買うよりも初期費用を抑えて家を持てるメリットがありますが、毎月地代(土地のレンタル料)を地主に支払う必要があり、契約期間が終われば土地を更地にして返さなければならない場合もあります。

そのため、借地権が絡む物件を購入したり借りたりする人にとって、「その土地をどんな条件で借りているのか」は、将来の生活や金銭的負担に直結する非常に重要な情報となります。

売買取引における調査範囲と説明ルール

宅地建物取引業者が売買取引の仲介等を行う場合、対象物件の状況によって調査と説明のルールが細かく決められています。

借地権付建物そのものを売買する場合

借地権付建物の売買等を行う場合においては、建物と敷地の権利関係が非常に重要となるため、当該借地権の内容についてしっかりと説明することが義務付けられています。地代の額や契約の残存期間、更新の条件などを重要事項説明書に記載します。

マンション(区分所有建物)の売買の場合

取引の対象が、建物の区分所有等に関する法律に規定する区分所有権(つまり分譲マンションの各部屋の所有権ということ)の目的である借地権付マンションなどの場合は、法第35条第1項第6号に基づき、必ず当該借地権の内容を説明しなければなりません。

借地権が存在する「宅地」を売買する場合

借地権が設定されている土地(底地)を売買する場合も注意が必要です。

まず、当該借地権が登記されている場合は、法第35条第1項第1号に基づき、必ず借地権の内容につき説明することとされています。

しかし、借地権は土地の登記簿に記載されていないことも多々あります。

その場合でも、以下の条件を満たしていれば借地権者は第三者に対抗できる(つまり新しい土地の持ち主に対して自分の権利を主張できるということ)ため、不動産会社は調査と説明を行わなければなりません。

  • 土地の上に借地権者が登記された建物を所有している場合:宅地上に建物が存する場合には、建物と当該宅地の権利関係を確認し、借地権の存否及び借地権の内容につき説明することとされています。
  • 建物の登記がない、または宅地上に建物が存しない場合:借地借家法(つまり土地や建物の貸し借りに関するルールの法律ということ)第10条第2項に基づき、土地の上に一定の掲示をしたときは第三者に対抗できるため、宅地建物取引業者は、当該宅地上に借地権の存在を知り得た場合においては、借地権の内容につき説明することとされています。

賃貸借取引における調査範囲と説明ルール

賃貸でも借地権の説明が必須な理由

借地権付建物の説明義務は、売買だけでなく、その建物を「賃貸」する場合にも適用されます。

宅地建物取引業者が、借地権付建物の賃貸借の代理又は媒介を行う場合においては、当該建物が借地権付建物である旨及び借地権の内容につき説明することとされています。

これは、当該借地契約の内容が、建物賃借人(つまり部屋を借りるお客さまということ)の居住の安定にとって非常に重要であるためです。

例えば、土地の借地期間があと数年で切れてしまう建物を借りた場合、借主は急に退去を迫られるリスクがあります。

そのため、賃貸借契約であっても背景にある土地の権利関係をしっかり伝える必要があります。

このルールがあるメリット・デメリット

借地権に関する調査と説明のルールが法律で厳格に定められていることには、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

お客さま側

土地の権利関係や地代の負担、契約期間などを事前に把握できるため、将来的な土地の明け渡しや更新料などの予期せぬトラブルを回避し、安心して取引ができます。

業者側

物件種別(戸建て、マンション、土地)や登記の有無に応じた調査範囲がガイドラインで明確に示されているため、ルールに従って適正に説明を行えば、後々の説明義務違反に問われるリスクを減らすことができます。

デメリット

業者側

土地の登記簿を確認するだけでなく、建物の登記状況や、現地の立て札(掲示)の有無まで確認する必要があるため、通常の完全な所有権の物件を扱うよりも、権利関係の調査に手間と時間がかかります。

まとめ:複雑な権利関係を正確に伝えてトラブルを防ごう

借地権付建物や借地権のある土地の重要事項説明では、「借地権の内容」を正確に伝えることが最大のポイントです。

売買であっても賃貸であっても、その建物を支える土地のルールがお客さまの生活に大きな影響を与えます。

土地の登記簿に借地権の記載がない場合でも、建物の登記や現地の掲示によって権利が主張されるケースがあるため、現地調査や資料の確認を怠らないようにしましょう。

複雑な権利関係だからこそ、わかりやすい言葉に噛み砕いて説明することが、プロとしての信頼に繋がります。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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