宅建業の「従業者名簿」と「業務に関する帳簿」の正しい書き方とエクセル等での電子データ保存要件

宅建業の「従業者名簿」と「業務に関する帳簿」の正しい書き方とエクセル等での電子データ保存要件

「宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)」では、不動産会社に対して「従業者名簿」と「業務に関する帳簿」という2つの重要な書類を事務所ごとに備え付けることを義務付けています。

「手書きのノートじゃなきゃダメなの?」「エクセルで管理してもいいの?」と疑問に思う新人事務員や営業マンも多いかもしれません。

この記事では、これらの書類の正しい書き方や、電子データでの保存ルール、そして罰則について、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。

結論:名簿と帳簿は、不動産会社の「スタッフの公式リスト」と「取引の家計簿」!エクセルでの保存もOK

結論から言いますと、従業者名簿は学校の「職員名簿」のようなものであり、業務に関する帳簿は日々の出来事を記録するお店の「家計簿や売上帳」のようなものです。

どちらも事務所に必ず置いておく必要があります。

そして、これらは必ずしも紙の分厚いノートで作る必要はありません。

必要な時にすぐに紙に印刷したり、画面に映したりできる状態であれば、エクセルなどのパソコンのデータ(電磁的記録)で保存することが法律で公式に認められています。

そもそもなぜ必要?2つの書類が義務付けられている理由

不動産取引は非常に高額であり、お客様の人生を左右する大きな買い物です。

もしトラブルが起きたとき、「誰が担当したのかわからない」「どんな契約だったか記録がない」という状態では、お客様を守ることができません。

そのため、宅建業法第48条第3項および第49条では、宅地建物取引業者(つまり不動産会社のこと)に対して、事務所ごとにスタッフのリストと取引の記録を正確に残すことを義務付けています。

これにより、後からいつでも取引の透明性を証明できる状態を作っているのです。

【従業者名簿】の正しい書き方と閲覧ルール

従業者名簿は、その事務所で働くすべてのスタッフの情報を記録するものです。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、詳しい書き方が定められています。

代表者から裏方スタッフまで全員の職務内容を記載する

名簿には、従業者の氏名や従業者証明書(つまり公式な身分証のこと)の番号などを記載します。 とくに「主たる職務内容」の欄の書き方には注意が必要です

  • 代表者や役員の場合:そのまま「役職名(社長、専務など)」を記入します。
  • それ以外のスタッフの場合:総務、人事、経理、営業などに区分して記入し、なるべく所属する社内の組織名も一緒に書くこととされています。

お客様と直接接する営業マンだけでなく、裏方で働く事務スタッフも含め、証明書を発行した全員を記載しなければなりません。

お客様から求められたら絶対に見せる義務がある

従業者名簿はただ記録するだけでなく、取引の関係者(つまりお客様や取引先のこと)から「見せてください」と請求があったときは、必ず閲覧に供しなければなりません(見せなければなりません)。

「個人情報だから」と断ることは法律違反となります。

希望があれば「旧姓」の併記も可能

結婚などで名字が変わったスタッフが旧姓での仕事を希望する場合、名簿に旧姓を併記することが認められています。

ただし、お客様を混乱させないため、場面によって現姓と旧姓を気分で使い分けるような行為は禁止されています。

【業務に関する帳簿】の正しい書き方

業務に関する帳簿は、取引のたびにその内容を記録するノートです。

取引の都度、面積などの正確な情報を記載する

宅建業に関し取引があった都度、その年月日や、取引に係る宅地や建物の所在、面積などを記載しなければなりません。

とくに建物の「床面積」の書き方については、各階ごとに壁その他の区画の「中心線」で囲まれた部分の水平投影面積(つまり壁の厚みの真ん中を基準にして測った面積のこと)で記載するという細かいルールが定められています。

【実践編】エクセル等の電子データで保存するための要件

手書きでの管理は大変ですが、宅建業法ではこれら2つの書類を電子媒体(パソコンのデータ)で保存することを認めています。

すぐに紙に印刷できる・画面に表示できる状態にしておく

名簿と帳簿の情報を電子計算機(パソコン)のファイルなどに記録し、必要に応じてプリンター等で明確に「紙面に表示(印刷)」できる状態にしておけば、紙のノートを作らなくても法律の義務を果たしたことになります。

また、お客様から従業者名簿の閲覧を求められた際にも、パソコンやタブレットのディスプレイ(画面)に名簿のデータを表示して見せる方法で対応することが可能です。

注意!作成をサボると「50万円以下の罰金」の対象に

「誰も見ないから後でまとめて書こう」と書類の作成をサボっていると、非常に重いペナルティが待っています。 宅建業法第83条によれば、以下の行為をした者は「50万円以下の罰金」という刑事罰に処されます。

  • 従業者名簿を備え付けない、記載しない、ウソの記載をした
  • 業務に関する帳簿を備え付けない、記載しない、ウソの記載をした

行政の立ち入り検査の際などに発覚すれば、罰金だけでなく業務停止などの行政処分(つまり行政からの重いペナルティのこと)の対象にもなるため、日々の正確な記録が不可欠です。

名簿と帳簿のルールが存在するメリット・デメリット

これらの書類の作成ルールが存在することには、次のような意味があります。

項目内容
メリットお客様にとっては、トラブル時に担当者の身元や取引の正確な記録を確認できるため、安心して不動産会社を利用できるという大きな得があります。不動産会社にとっても、過去の取引記録を正しく残しておくことで、社内の情報共有がスムーズになり、言った言わないのトラブルから会社を守る証拠になります。
デメリット不動産会社にとっては、スタッフが入退社するたび、あるいは取引が終わるたびに必ず名簿や帳簿を更新しなければならず、日々の事務作業の手間と時間がかかります。記載漏れやミスがあると罰金の対象になるというプレッシャーが常につきまといます。

まとめ

宅建業の「従業者名簿」と「業務に関する帳簿」の書き方や保存ルールについて解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。

  • 従業者名簿はスタッフ全員の職務内容などを書き、求められたらお客様に見せる義務がある。
  • 業務に関する帳簿は、取引の都度、面積や年月日などを正確に記録する。
  • どちらも、すぐに印刷や画面表示ができる状態ならエクセル等の電子データで保存してOK。
  • 名簿の閲覧を求められたら、画面を見せる形でも対応できる。
  • 作成を怠ったりウソを書いたりすると、50万円以下の罰金になる。

面倒な事務作業に思えるかもしれませんが、これらの記録は会社の信用を根底から支える重要な土台です。不動産業に従事する皆様は、電子データなどを賢く活用しながら、法令遵守に基づいた正確な記録と管理を日頃から徹底しましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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