複数の宅建業者が介在する売買媒介の仲介手数料(報酬)!限度額の計算と分配ルール

不動産の売買において、一つの物件に対して複数の不動産会社が関わって取引をまとめるケースはよくあります。しかし、「複数の会社が動いたのだから、お客様に請求する仲介手数料も増えるの?」と疑問に思う新人営業マンもいるかもしれません。
「宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)」では、複数の業者が介在した場合の報酬について厳格な限度額が定められています。
この記事では、難しい宅建業法の報酬ルールについて、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。
結論:複数の業者が介在しても、お客様(依頼者)が支払う仲介手数料の上限は変わらない!
結論から言いますと、複数の不動産会社が間に入って取引をまとめたとしても、依頼者(つまり売主や買主のこと)が支払う仲介手数料の上限は、不動産会社が1社だけのときと全く同じです。
これは、1つのホールピザ(つまり法律で決められた報酬の上限額のこと)を、関わった不動産会社たちで切り分けてシェアするようなものです。
配達に関わったスタッフの人数が増えたからといって、お客様に2枚目のピザの代金を請求してはいけないのと同じルールになっています。
そもそもなぜ限度額がある?報酬ルールの理由
不動産会社が受け取る仲介手数料(つまり宅建業者が受け取る報酬のこと)には、国土交通大臣が定めた上限額が存在します。
不動産は数千万円もする非常に高額な商品です。
もし手数料が自由設定だと、足元を見て法外な料金を請求する悪徳業者が現れるかもしれません。
これは、メーターのないタクシーに乗るようなもので、お客様は怖くて不動産を買えなくなってしまいます。
お客様が安心して不動産取引を行えるよう、国が「これ以上はもらってはいけない」という強力なバリアを張っているのです。
複数の不動産会社が関わる「共同仲介」とは?
実際の不動産取引では、売主から物件を預かっている会社(つまり元付業者のこと)と、買主を見つけてきた会社(つまり客付業者のこと)が協力して契約をまとめることが多く、これを共同仲介と呼びます。
自社だけで売主と買主の両方を見つける「両手仲介」であれば、上限額のピザを2枚(売主から1枚、買主から1枚)独り占めできますが、他社と協力する「共同仲介」の場合は、報酬の計算方法に注意が必要です。
【売買・媒介】複数業者が介在する場合の限度額計算ルール
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、複数の宅建業者(つまり不動産会社のこと)が1つの売買の媒介(つまり売主と買主の間に入って契約をまとめること)をした場合、厳密なルールが適用されます。
依頼者「一方」から受け取れる報酬の総額が限度額以内
1つの売買取引において、複数の宅建業者が介在した場合、その複数の業者が「依頼者の一方(例えば売主だけ)」から受領する報酬額の総額は、法律で定められた計算方法による金額以内でなければなりません。
たとえば、売主からの依頼をA社とB社の2社で受けた場合、A社とB社が売主から受け取る手数料の「合計額」が、本来1社で受け取れる上限額に収まっている必要があります。
代理人が複数立つ場合も「全体の限度額」は決まっている
媒介ではなく「代理(つまり依頼者の代わりに契約する権限を持つこと)」の場合、1社で受け取れる報酬の上限は媒介の2倍になります。
しかし、売主と買主の双方が別々の業者に代理を依頼した場合、双方の代理人が受け取る報酬の「合計額」も、国土交通大臣の定める額(媒介の上限額の2倍)を限度としなければなりません。
ルールをすり抜けて青天井に報酬をもらうことはできない仕組みになっています。
注意!低廉な空き家等における上限額の特例
近年、空き家問題への対策として「低廉な空家等(つまり売買代金が800万円以下の物件のこと)」に関する報酬の特例が設けられました。
価格が安い物件は、通常の計算式では仲介手数料が非常に安くなり、不動産会社が調査費用などで赤字になってしまうため、一定の要件を満たせば通常よりも少し多めに報酬をもらえるというルールです。
複数の業者が介在してこの特例を使う場合でも、「依頼者の一方から受領する報酬額の総額が、この特例によって算出した金額以内」でなければならないと明記されています。
業者間での仲介手数料の分配ルール(どう分ける?)
では、限度額に収まるように、複数の不動産会社はどうやって報酬を分けるのでしょうか。
実は、宅建業法には「A社が何割、B社が何割」という具体的な分配の割合までは決まっていません。
多くの場合、買主を見つけた客付業者は買主から手数料を満額もらい、物件を預かる元付業者は売主から手数料を満額もらう、という形で自然と分配(通称:分かれ)されます。
もし、1人の売主の側だけで複数の業者が動いた場合は、業者同士の話し合いでピザをどう切り分けるか(折半にするかなど)を決めることになります。
報酬の限度額ルールが存在するメリット・デメリット
このような限度額と総額のルールが存在することには、次のような意味があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | お客様にとっては、何社関わろうと支払う手数料の上限が変わらないため、予想外の高額な出費を防げるという大きな得があります。不動産会社にとっても、他社と協力して物件情報を広く流通させやすくなり、結果的に早く成約に結びつくというメリットがあります。 |
| デメリット | 不動産会社にとっては、複数の業者が関わると1つの取引に対する報酬が他社と分け合いになる(ピザが小さくなる)ため、自社だけで取引をまとめた場合(両手仲介)と比べて、利益が少なくなってしまうという面があります。 |
まとめ
複数の宅建業者が介在する売買媒介の仲介手数料について解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。
「他社も動いてくれたから、お客様に追加で手数料をもらおう」という行為は、宅建業法違反となる重大なペナルティの対象です。不動産業に従事する皆様は、報酬の計算と分配のルールを正しく理解し、法令遵守を徹底した誠実な取引を心がけましょう。
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