銀行等の保証委託契約と保険事業者の保証保険契約の違い(手付金等保全措置)

宅地建物取引業者(つまり自らが売主となる不動産会社のこと)が物件を販売する際、買主の大切な手付金を守るための「手付金等の保全措置」が義務付けられています。
その保全措置の方法として、「銀行等の保証委託契約」と「保険事業者の保証保険契約」の2つがよく使われますが、「名前が似ていて違いがわからない」「どう使い分ければいいの?」と悩む新人営業マンも多いのではないでしょうか。
この記事では、宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)における2つの契約の仕組みや条件の違いについて、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。
結論:「保証委託」は銀行に連帯保証人になってもらうこと、「保証保険」は保険会社に損害をカバーしてもらうこと!
結論から言いますと、銀行等による保証委託契約は「借金をするときに親に連帯保証人になってもらう」ようなものであり、保険事業者による保証保険契約は「万が一の車の事故に備えて自動車保険に入る」ようなものです。
どちらも「不動産会社が倒産して物件が引き渡されなくなったときに、買主が支払った手付金等が確実に返ってくる仕組み」であることは同じですが、お金を返してくれる相手(銀行か保険会社か)と、その法的な仕組み(保証か保険か)が異なります。
結果的に買主が守られる度合いに差はありません。
そもそもなぜ必要?「手付金等の保全措置」のおさらい
不動産の売買契約では、契約時に代金の一部として手付金等(つまり契約の締結の日以後、物件の引渡し前に支払われる代金の一部などの金銭のこと)が支払われます。
しかし、物件の引き渡し前に売主である不動産会社が倒産してしまうと、買主は物件を手に入れられないだけでなく、支払ったお金も戻ってこないという最悪のトラブルに巻き込まれる危険があります。
これを防ぐため、宅建業法第41条および第41条の2では、不動産会社に対して「手付金等の保全措置」を講じることを義務付けています。 保全措置の方法には以下の3種類があります。
- 銀行等による保証委託契約(未完成物件・完成物件ともに利用可能)
- 保険事業者による保証保険契約(未完成物件・完成物件ともに利用可能)
- 指定保管機関による保管(完成物件のみ利用可能)
今回は、未完成物件・完成物件のどちらでも利用できる「保証委託契約」と「保証保険契約」の2つに絞って、その違いを詳しく見ていきましょう。
銀行等による「保証委託契約」の仕組みと特徴
宅建業法第41条第1項第1号に規定されているのが、銀行等による保証委託契約です。
銀行が「連帯保証人」としてお金を返す
これは、宅地建物取引業者が銀行などの金融機関にお願いして、「もし当社が倒産してお客様に手付金を返せなくなったら、代わりに全額返してください」という約束を取り付ける仕組みです。
銀行が連帯保証人(つまり本来の借主と同じ重い責任を負って借金を返す人のこと)となってくれるため、買主は不動産会社がダメになっても巨大な金融機関から直接お金を取り戻すことができます。
法律で定められた厳しい条件
この契約を成立させるためには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 保証債務が、受領した手付金等の「全部」を保証するものであること。
- 保証すべき手付金等の返還債務が、物件の「引渡し」までに生じたものであること。
- 銀行等が手付金等の返還債務を連帯して保証することを約する書面(つまり保証書のこと)を買主に直接交付すること。
なお、買主の承諾を得れば、紙の保証書の代わりに電磁的方法(つまりPDFなどの電子データのこと)で提供することも認められています。
保険事業者による「保証保険契約」の仕組みと特徴
宅建業法第41条第1項第2号に規定されているのが、保険事業者による保証保険契約です。
保険会社が「損害保険」としてお金をカバーする
こちらは、宅地建物取引業者が保険会社と「損害保険」の契約を結ぶ仕組みです。
不動産会社が手付金等の返還債務を果たせず、買主に損害が発生した場合、保険事業者がその損害(手付金の額に相当する部分)を穴埋めすることを約束してくれます。
旅行中にケガをしたら保険金が下りる「旅行傷害保険」のようなイメージです。
法律で定められた厳しい条件
この契約を成立させるためには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 保険金額が、受領しようとする手付金等の「全額(すでに受領したものがある場合は加えた額)」に相当する金額であること。
- 保険期間が、少なくとも契約が成立した時から物件の「引渡し」までの期間であること。
- 保険証券又はこれに代わるべき書面(つまり保険に入っていることの証明書のこと)を買主に直接交付すること。
こちらも保証委託契約の保証書と同様に、買主の承諾があれば電磁的方法による交付が可能です。
【比較表】保証委託契約と保証保険契約の共通点と違い
2つの保全措置について、共通点と違いを表でまとめました。
| 項目 | 銀行等の保証委託契約 | 保険事業者の保証保険契約 |
|---|---|---|
| 仕組み | 銀行が連帯保証人になる | 保険会社が損害を保険金で穴埋めする |
| 買主に渡すもの | 保証を約する書面(保証書) | 保険証券等の書面 |
| 担保される金額 | 手付金等の全額 | 手付金等の全額 |
| 担保される期間 | 物件の引渡しまで | 物件の引渡しまで |
| 使える物件 | 未完成・完成物件 | 未完成・完成物件 |
名前や法律上の仕組みは異なりますが、「支払った手付金等が全額守られる」「引渡しまで守られる」という買主にとっての結果は全く同じです。
メリット・デメリット:保全措置のルールが存在する理由
このような手付金等の保全措置のルールが存在することには、次のような意味があります。
メリット
買主にとっては、支払った高額な手付金が銀行や保険会社という盤石な組織によって確実に守られるため、不動産会社の倒産リスクを恐れずに安心してマイホームを購入できるという大きな得があります。
不動産会社にとっても、「当社は保全措置を講じているので安全です」とアピールすることで、お客様からの強固な信用を得やすくなります。
デメリット
不動産会社にとっては、銀行や保険会社と契約を結ぶために、厳しい審査を受けたり、保証料や保険料といったコストを自社で負担したりしなければなりません。
また、買主へ保証書や保険証券を交付する手間がかかり、これらの保全措置を怠ると、買主は手付金の支払いを拒否することができ、さらに宅建業法違反として重いペナルティを受けるリスクがあります。
まとめ
手付金等保全措置における「銀行等の保証委託契約」と「保険事業者の保証保険契約」の違いについて解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。
手付金等は、お客様が長年貯めた大切なお金です。
不動産業に従事する皆様は、これら2つの保全措置の仕組みを正しく理解し、会社の状況に合わせて適切な方法を選択し、お客様に真の安心と安全を提供する取引を実現しましょう。
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