信託会社や信託業務兼営金融機関に宅建業免許は必要?適用除外ルールと届出義務を解説

信託会社や信託業務兼営金融機関に宅建業免許は必要?適用除外ルールと届出義務を解説

不動産取引の現場において、信託銀行などの金融機関や信託会社が取引の当事者として登場することがあります。

その際、「これらの大きな会社は、一般的な不動産会社と同じように宅建業の免許を持っているのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか。

この記事では、宅建業法(つまり不動産取引のルールを定めた法律のこと)における信託会社や信託業務兼営金融機関に対する「適用除外ルール」と「届出義務」について、法律の知識がない初心者でもスッと理解できるように、日常の出来事に例えながらわかりやすく解説します。

結論:信託会社などは宅建業の「免許」は不要だが、「届出」は必要!

結論から言いますと、信託会社や信託銀行などの信託業務兼営金融機関が不動産取引をビジネスとして行う場合、宅地建物取引業の免許(つまり国や都道府県から宅建業を営む許可をもらうこと)を取得する必要はありません。

これは、遊園地の入場ゲートに例えるなら、「すでに特別なVIP年間パスポートを持っている人は、一般のチケット売り場(免許の審査)に並ぶ必要はないけれど、入り口で名前の記帳(届出)だけはしてくださいね」というルールです。

厳しい免許の審査は免除されますが、国に対して何も手続きしなくてよいというわけではありません。

そもそもなぜ免許が不要?適用除外ルールの理由

通常、不動産の売買や仲介などのビジネスを行うには、宅建業法第3条に基づく免許が必要です。

しかし、宅建業法第77条第1項により、特定の信託会社にはこの免許関連の規定が適用されないことになっています。

このような規定を適用除外(つまり特定のルールが当てはまらなくなる特別扱いのこと)と呼びます。

なぜこのような特別扱いがあるのでしょうか。

それは、信託会社や信託銀行が、すでに「信託業法」や関連する法律によって、国から極めて厳格な審査と監督を受けて設立されているからです。

大型バスの運転免許(信託業などの厳しい免許)を持っているプロの運転手に対して、今さら普通自動車の運転免許(宅建業の免許)の試験を受けさせる必要はありませんよね。

すでに十分すぎるほどの信用と財産的基礎、コンプライアンス体制が整っていると国が認めているため、宅建業法の免許審査を二重に行うのは無駄だと判断されているのです。

どんな会社が対象?信託会社と信託業務兼営金融機関

この適用除外ルールの対象となるのは、主に以下の機関です。

  • 信託業法第3条または第53条第1項の免許を受けた信託会社(つまりお客様の財産を預かって管理・運用するプロの会社のこと)
  • 信託業務を兼営する金融機関(つまり信託業務も行っている銀行などのこと)

たとえば、「〇〇信託銀行」といった名前の金融機関は、この特例の対象となります。

これらの法人は、お客様から大切な不動産を信託財産として預かり、それを売却したり貸し出したりする業務を日常的に行っています。そのため、不動産取引をスムーズに行える特例が法律で用意されているのです。

注意!免許は不要でも「宅建業者とみなされる」

ここで新人営業マンが勘違いしやすい非常に重要なポイントがあります。

それは、「免許が不要=宅建業法のルールを一切守らなくていい」というわけではない、ということです。

宅建業法第77条第2項では、「宅地建物取引業を営む信託会社については、免許に関する規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者(つまり不動産会社のこと)とみなしてこの法律の規定を適用する」と定められています(みなし業者と呼びます)。

重要事項説明や標識の掲示などはすべて義務

つまり、免許の取得手続きや、無免許事業の禁止に関するルールなどは免除されますが、実際の不動産取引の実務に関する法律のルールは、一般の不動産会社と全く同じように守らなければなりません。

たとえば、以下のような義務は信託会社であっても当然に適用されます。

  • 取引における重要事項説明(つまり契約前に物件や取引条件に関する重要な情報を説明すること)の実施
  • 宅地建物取引士(つまり不動産取引の専門家としての国家資格者のこと)の設置
  • 事務所での標識(宅地建物取引業者票)の掲示
  • 誇大広告の禁止などの業務上のルール

スポーツの試合に例えるなら、予選(免許審査)は免除されてシード権で本戦に出場できるけれど、本戦の試合中の反則ルール(実務の規制)は他の選手と同じように厳しくジャッジされる、ということです。

【実践編】宅建業を営むための「届出義務」とは?

免許が不要だからといって、信託会社が勝手にいつでも不動産取引を始めていいわけではありません。

宅建業法第77条第3項では、信託会社が宅建業を営もうとするときは、その旨を国土交通大臣に届け出なければならないと規定されています。

国土交通大臣へ届出をすれば宅建業者とみなされる

この「届出」は、行政に対して「これから宅建業のビジネスを始めます」と宣言する手続きです。

書類を提出して受理されることで、初めて国土交通大臣の免許を受けた宅建業者と「みなされる」ことになります。

届出を済ませた信託会社は、宅地建物取引業者名簿に登録され、国土交通大臣から監督や指導を受ける立場になります。

万が一、重要事項説明の義務違反など、宅建業法に違反する悪質な行為をした場合は、一般の業者と同様に行政処分(つまり行政からの重いペナルティのこと)を受けることになります。

適用除外と届出ルールが存在するメリット・デメリット

このような特例ルールが存在することには、次のような意味があります。

項目内容
メリットすでに別の法律で厳しく審査されている信託会社が、二重の行政手続きを省いてスピーディーに不動産取引を開始できるという大きな得があります。
これにより、お客様の資産(不動産)の運用や売却が円滑に進み、不動産市場全体の活性化につながります。
デメリット信託会社にとっては、自社が「みなし業者」として宅建業法の厳しい実務ルール(重要事項説明など)の対象になることを社内で徹底する必要があります。
もし「免許がないから宅建業法は関係ない」と勘違いしてルールを破れば、国土交通大臣から厳しい処分を受けるリスクがあります。

まとめ

信託会社や信託業務兼営金融機関に対する宅建業法の特例ルールについて解説しました。重要なポイントを箇条書きで振り返りましょう。

  • 信託会社や信託銀行が宅建業を行う場合、「免許」を取得する必要はない。
  • 免許の代わりに、開始前に国土交通大臣への「届出」が必須である。
  • 届出をすると「国土交通大臣の免許を受けた宅建業者」とみなされる。
  • 免許の手続きは免除されるが、重要事項説明や標識の掲示などの実務上のルールはすべて適用される。
  • 違反すれば、一般の不動産会社と同じように行政処分の対象となる。

不動産の現場では、さまざまな法人と協力して取引を進める機会があります。相手が信託銀行などであっても、宅建業法のルールの下で「みなし業者」として動いているという仕組みを正しく理解し、スムーズで誠実な取引を心がけましょう。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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