事務所移転時の営業保証金「保管替え」手続きとは?金銭供託と有価証券供託の違い

事務所移転時の営業保証金「保管替え」手続きとは?金銭供託と有価証券供託の違い

不動産会社が本店を移転する際、引っ越し作業や登記変更だけでなく、宅建業法上の「営業保証金」の手続きも忘れてはいけません。

主たる事務所の場所が変わると、管轄の供託所も変わるため、預けているお金も移動させる必要があります。

この記事では、本店移転時に必要となる営業保証金の「保管替え」手続きについて、金銭で供託している場合と有価証券を利用している場合の違いを、知識がない初心者でも理解できるよう噛み砕いて解説します。

正しい手続きを知り、移転時の資金繰りリスクを避けましょう。

結論!「保管替え」とは預けたお金を新しい役所へお引越しさせる手続き

結論から言うと、保管替えとは、本店を移転して管轄の供託所が変わったときに、前の供託所から新しい供託所へ直接お金を移してもらう手続きのことです。

これは、銀行の口座残高を、窓口の人が手続きしてそのまま別の支店の口座へ移し替えてくれるようなものです。

宅建業法(つまり、不動産取引の公正を確保し、購入者等の利益保護と流通の円滑化を図るための法律ということ)では、営業保証金(つまり、万が一お客様に損害を与えてしまったときに備えて、あらかじめ法務局などの供託所に預けておくお金ということ)は、主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならないと定められています。

そのため、移転によって最寄りの供託所が変わる場合は、新しい供託所に対応するための手続きが必要になります。

金銭と有価証券で違う!移転時の手続きルールの違い(一覧表)

結論から言うと、営業保証金を「現金だけで預けているか」「有価証券を使っているか」によって、移転時の手続きが全く異なります。

供託している内容手続きの方法資金の負担
金銭のみ保管替え(直接移動)ができる費用を予納するだけで済む
有価証券のみ、または金銭と有価証券の混合保管替えできない。新しい供託所に新たに供託し直す一時的に二重にお金を預ける負担がある

金銭のみで供託している場合(保管替えOK)

金銭のみで供託している場合は、費用を予納して保管替えを請求するだけで手続きが完了します。

  • 遅滞なく、移転前の供託所に対して保管替えを請求する
  • お金は直接、新しい供託所へ送金される ・一時的に手元から新しいお金を出す必要がない

【メリット・デメリット】

このルールがあることで、業者は新しい供託所へのお金を別途用意しなくて済むという資金繰り上のメリット(得)があります。

デメリットは特にありませんが、手続きの費用(予納金)が少額かかる程度です。

有価証券を含む場合(保管替えNG・新たに供託が必要)

有価証券(つまり、国債証券や地方債証券など、お金と同じような価値を持つ証明書ということ)を含めて供託している場合は、保管替えができず、新しい供託所へ新たに供託をやり直さなければなりません。

これは、新しいアパートに引っ越す際、古いアパートの敷金が返ってくる前に、自分で新しいアパートの敷金を全額払わなければならないのと同じ状況です。

  • 保管替えの請求はできない
  • 遅滞なく、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない
  • 古い供託所から有価証券を取り戻すには、別途公告などの手続きが必要になる場合がある

【メリット・デメリット】

有価証券を利用することで、手元に現金がなくても利息等を得ながら営業保証金に充てられるという得があります。

しかし、移転時には保管替えができず、一時的に「古い供託所」と「新しい供託所」の両方に保証金を預けた状態(二重供託)になり、多額の資金が拘束されるという大きなデメリット(リスク)があります。

まとめ

結論として、本店移転によって管轄の供託所が変わる場合、営業保証金を「金銭のみ」で供託していれば、スムーズに「保管替え」の手続きができ、資金の負担を抑えることができます。

しかし、「有価証券」を利用している場合(金銭との混合を含む)は保管替えができず、遅滞なく新しい供託所に新たに供託し直す必要があるため、一時的な二重供託による資金負担が発生します。

事務所移転を計画する際は、自社の供託状況を確認し、有価証券を利用している場合は十分な資金繰りの準備をしておくことが実務上非常に重要です。

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免責事項

本記事は、「宅地建物取引業法」および国土交通省の「解釈・運用の考え方」の概要を、実務に携わる方向けに分かりやすく要約・解説したものです。正確な情報提供に努めておりますが、法令の厳密な定義や例外規定をすべて網羅しているわけではありません。最終的な法解釈や、お客様との個別具体的な取引における適法性のご判断につきましては、ご自身の責任において法令の原文を直接ご確認いただくか、行政機関・弁護士等の専門家へご相談いただきますようお願いいたします。

監修者情報

ミカタ株式会社 代表取締役 荒川 竜介
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