【競合多寡の時代だからこそ覚えておきたい】専門士業から「選ばれる」不動産会社になるためのポイント

【競合多寡の時代だからこそ覚えておきたい】専門士業から「選ばれる」不動産会社になるためのポイント

紹介による成約率が高いことについては、もはや説明不要でしょう。

統計的なデータが示されているわけではありませんが、筆者の実務経験上、紹介案件の成約率は30~50%程度になるケースが多いと感じています。

紹介による成約率が高い理由は、紹介者に対する信頼が紹介先にも及ぶことで、警戒心が低下するためです。

これは、社会的証明(バンドワゴン効果)、ハロー効果(光背効果)などの心理的要因でも説明できます。

しかし、結局のところ紹介者に対する信用が連鎖することで警戒心が薄れ、競合他社との比較対象となりにくいことが、成約に寄与していると考えられます。

それだけに、日頃から紹介をしてもらえる方々との人間関係構築に努め、その関係性を継続しておくことは重要です。

紹介者としては、友人、知人、OB客などに加えて、弁護士や司法書士、税理士などの専門士業も挙げられるでしょう。

これらのうち、専門士業はそれぞれが法務、登記、税務などの分野におけるエキスパートです。

中でも弁護士は、各専門士業の取扱分野に関する法律問題を横断的に扱えるほど広範な法律事務を取り扱うことができる国家資格です。

そのため、不動産取引はもとより、相続、離婚、破産、民事信託など、不動産の処分を伴う法的トラブルの解決を担うため、極めて重要なキーパーソンとなります。

もっとも、広範な法律事務を取り扱えるからといって、物件調査を始めとする不動産の取引実務をこなせるとは限りません。

もちろん、必要に応じて対応することはあるでしょうが、専門性を考慮すれば必ずしも効率的とはいえません。

さらに、万に一つでも調査ミスがあれば賠償リスクが生じることを、誰よりも深く正確に理解しています。

そのため、実務においては専門士業間でネットワークを構築し、各専門士業が自身の得意とする業務に専念しつつ情報を共有し、共同で問題解決にあたるケースが多いのです。

したがって、そのネットワークに加わることができれば、その効果は計り知れません。

しかし、各士業が不動産業者に対して求める「真のニーズ」や「職域の境界線」を理解していなければ、そのネットワークに迎え入れられることはありません。

専門士業で構成されるネットワークは、それぞれが自らの信用を担保し合うことで成立しています。

だからこそ、そのネットワークは各分野のプロフェッショナルによって構成されるのです。

紹介した業者が問題を起こせば、自らの信用を損なう可能性があるのですから、これは当然だといえるでしょう。

そのため、趣味が同じ、同郷である、あるいは旧知の間柄であるといった個人的な関係性だけでは成立しません。

信頼に足る実力を備えていることが前提となるのです。

本稿では、専門士業からの紹介率を高めるためのネットワーク造りの方法や、既存ネットワークに参入させてもらうためのポイントについて検証します。

専門士業はどのような場面で不動産会社を必要とするのか

士業からの紹介を受けたいのであれば、まず理解しておくべきことがあります。

それは、専門士業は不動産会社へ仕事を紹介するためにネットワークを構築しているわけではないという、極めて当然の理屈です。

専門士業がネットワークを構築する目的は、依頼者が抱える問題を円滑かつ適切に解決することにあります。

例えば、相続事件を受任した弁護士が遺産分割を進める過程で、不動産を換価しなければ問題を解決できないケースが考えられます。

あるいは、離婚事件において財産分与のために自宅を売却しなければならない場合もあるでしょう。

同様に、破産事件においても破産財団を形成するためには、不動産の処分を行う必要性が生じます。

これらの案件においては、法律問題の解決と並行して不動産売却を進める必要があります。

不動産の鑑定評価方法は確立されているものの、評価額と実勢価格に乖離が生じることは珍しくありません。

「現実問題として、幾らなら販売できるのか」といった実務感覚を有するのは、不動産業者です。

法的な評価と市場における流通価格との橋渡しを担う存在として、不動産業者の知見が求められているのです。

したがって、「紹介したいから」、「紹介して欲しいと営業されたから」、紹介するのではありません。依頼者の問題解決に必要不可欠だからこそ紹介をするのです。

これを正確に理解していないと、専門士業へのアプローチを見誤ります。

よく見受けられるのが、異業種交流会や会合などで顔を合わせた際、「何か案件がありましたら紹介してください」と名刺を配り歩く手法です。

広く顔を売るということだけが目的であれば、それも一つの手法でしょう。

しかし、筆者の実務経験上、多くの方々が集う場で名刺を配り歩いても、現実にはまったくといってよいほど効果は得られません。

重複になりますが、専門士業が求めているのは、「依頼者の問題解決を安心して任せられる専門家」です。

したがって、

「売却活動だけでなく、依頼者に対する配慮も含めて適切に対応できる」

「境界問題や騒音問題などの解決実績が豊富で、法的知識も相応に備えている」

「紹介客に対する進捗報告も適切で、紹介者への情報共有も怠りない」

など、自身がどのようなスキルを有し、業務を適切にこなせるかをアピールして信頼を得なければ、紹介はしてもらえないのです。

専門士業が求めているのは、馴れ合いの関係ではなく、依頼者の利益を実現するためのパートナーなのですから、これは当然です。

だからこそ、現実に紹介を受けている不動産会社は、自社の強みだけを一方的にアピールすることはありません。

専門士業がどのような案件で困っているのか、不動産会社に対して何を期待しているのかといったニーズを正確に把握したうえで、自身の専門性を、必要に応じて客観的なデータを提供しながら少しずつ関係性を深めていくことが重要です。

このような地道な活動こそが、本稿で繰り返し述べている「真のニーズ」を把握する第一歩となるからです。

事業規模が重視されるわけではない。専門士業が求める「真のニーズ」とは

第二章では、専門士業が不動産会社に求める真のニーズについて掘り下げていきたいと思います。

一般的な顧客は、「知名度」「広告量」といった、いわば事業規模の影響を強く受ける部分を選択肢とする傾向が見受けられるものの、専門士業が求めるのは、そのような表面的な要素ではありません。

「安心して依頼者を任せられるか」、「協力しながら共に問題を解決できるか」に尽きます。

例えば相続案件においては、相続人同士の感情が対立していることも珍しくありません。

そして離婚案件では、夫婦双方または一方が直接話をしたくないと希望し、私たち不動産業者がメッセンジャーとして双方の意思を伝える役割を担う場合もあります。

また、破産案件では債務者が精神的に追い詰められており、通常どおりの意思疎通が難しいケースもあるのです。

これらの案件においては、意図せず発した不用意な一言で問題をこじらせてしまうことがあります。

そもそもの話ですが、専門士業からの紹介案件は一般的な取引実務と一線を画すケースが少なくはありません。

何ら問題がなければ、専門士業を経由せず直接不動産業者へ相談すれば良いのですから、これは当然かもしれません。

このような前提条件を踏まえれば、専門士業が求めているのが不動産取引を行えるだけの会社ではないことがお分かりいただけるでしょう。

それだけに不動産業者に対しては、知識はもとより、言葉遣いや接遇、紹介客に対する特段の配慮など、プロフェッショナルとして素養が問われるのです。

加えて「どこまで対応し、どこからは専門士業へ判断を委ねるべきか」という役割分担に対する理解も求められます。

これが、本稿で再三主張している「職域の境界線」です。

筆者の知る限り、専門士業から継続的に紹介を受けている不動産業者ほど、自らの専門分野を超えた場合、安易な判断を行いません。

法律的な見解が必要と思えば弁護士へ、登記に関しては司法書士へ、税務であれば税理士へ相談するよう依頼者に促し、それぞれの専門家と連携しながら案件を進めていくのです。

反面、専門外の問題について断定的な説明を行ったり、自社だけで案件を完結させたりするような不動産業者は、専門士業から敬遠される傾向があります。

紹介は、一度案件を受ければ終わりというわけではありません。

紹介された相談者から「御社を紹介してもらえて良かった」と評価され、それが紹介者である専門士業の耳に届いて、初めて継続的な信用を得られるのです。

もちろん、問題を抱えている相談者は、案件処理のスピードを重視します。しかし、スピードを優先するあまり独断で判断することを繰り返すようでは、真の信頼を得られません。

依頼者の利益を最優先に考え、自らの専門領域を理解しながら、他士業と適切に連携できる不動産会社だけが、紹介を受け続けられるのです。

ネットワークは、一朝一夕では構築できないと知るべし

ここまで、専門士業が不動産会社を紹介する理由や、紹介先に求める「真のニーズ」について解説してきました。

これらを踏まえると、専門士業からの継続的な紹介を受けるために最も重要なのは、営業活動そのものより、「この人(会社)なら安心して依頼者を任せられる」という評価を積み重ねることだとお分かりいただけるでしょう。

もちろん、専門士業との接点を持つことは重要です。

知遇を得なければ、何も始まらないからです。

そのための手段としては、各士業が所属する職能団体の研修会や異業種交流会などへの参加、あるいはすでに取引のある専門士業から他士業を紹介してもらうといった方法が考えられます。

しかし、それらはあくまでも「入口」に過ぎません。

先述したように、名刺交換の機会を多くするだけで案件を紹介してもらえるほど、専門士業のネットワークは甘くないからです。

専門士業からの紹介案件には、依頼者の人生を左右しかねない重要な問題が数多く含まれているケースも少なくありません。

そして、紹介先の対応によって依頼者に不利益が生じれば、紹介した専門士業自身の信用にも影響します。

だからこそ専門士業は、口達者で営業が巧みと思われる不動産会社よりも、誠実な対応を積み重ね、専門家同士の信頼関係を構築できる相手を選ぶのです。

そのため、知遇を得られた際には、自社の実績や専門性を適切に伝えること以上に、各士業の業務内容を正確に理解したうえで、抱えている諸問題の解決に少なからず寄与できる存在であることをアピールする必要があるのです。

だからといって、多数の参加者がいる会合の場で早口に説明しても効果は得られません。名刺交換をした際に、「よろしければ後日、事務所へご挨拶に伺っても宜しいでしょうか」と許可を取り付け、具体的な訪問日を決めてしまうのが良策です。

そのうえで、多忙な専門士業の貴重な時間を浪費させることがないよう、自社の実績や専門性について一目で理解できるA4一枚程度の自己(もしくは企業)PR書面を持参し、手渡すのです。

そこには、顔写真や実績、得意とする分野や具体的に何ができるかに加えて、以下のような約束事項を盛り込むと良いでしょう。

  • 紹介案件についてはその進捗を適切に報告すること
  • 専門外の問題については、独断で判断しないこと
  • 依頼者への配慮を怠らないこと
  • 宅地建物取引業としての守秘義務を徹底すること
企業PR書面,不動産

これは、極めてアナログ的な手法ですし、自己PR書面もメールで送付すれば事足りると思われるかもしれません。

しかし、人間関係を構築するためには労を惜しんではなりません。

落ち着いた環境で直接顔を合わせ、お互いの考えや気苦労を雑談も交えながら話し合うことで、少しずつ関係性が構築されていくのです。

面談後も定期的にフォローし、「何かお困りごとはないですか」と問いかけ続けることで、「まずは1件、任せてみるか」と考えてくれるのです。

そして、紹介された案件については、約定どおり全精力を駆使して依頼者の利益を最優先に活動します。それが、「また紹介したい」という評価につながるのです。

「売却できればそれで良い」「案件さえ紹介してもらえれば良い」という姿勢は、容易に専門士業から見透かされます。

紹介は営業活動の成果ではないのです。

紹介が、依頼者の利益を最優先に考え行動した結果として生まれる、専門家同士による信頼関係の延長線上にあることを忘れてはなりません。

まとめ

競争が激化する現在の不動産業界において、成約に期待が持てる紹介案件は喉から手が出るほど欲しいものです。

紹介された顧客が成約に至った場合、一定の金額を支払うことを約定する『紹介キャンペーン』を開催すれば、なるほど一定の成果は得られるでしょう。

しかし、それは信頼関係に基づく紹介ではなく、成約すれば金銭を得られることが動機であるため、継続性がありません。

さらに、紹介料の支出は利益率の低下に直結します。

とはいえ、利益率が低下しても利益そのものが増加するのであれば、このような営業手法にも一定の合理性はあります。

しかし、専門士業とのネットワーク構築と比較すれば、継続性が得られないことが大きな課題となります。

さらに、信頼関係に基づく紹介は、紹介料の支払い如何を問わず、継続的に案件が寄せられる可能性があるという点で異なります。

もちろん、信頼関係は一朝一夕で構築できるものではありません。

専門士業との役割分担を尊重しながら、日々の業務を誠実に積み重ねることでしか評価を得られないからです。

ですが、価格や広告量のみでは差別化が難しくなった現在だからこそ、信頼関係に基づくネットワークからの紹介は、他社が容易に模倣できない大きな経営資源となるのです。

紹介とは、依頼者を託す行為であると同時に、紹介者自身の信用を託す行為でもあります。

その本質を理解し、専門士業が求める「真のニーズ」に応え続けることができたとき、初めて営業活動の延長ではない、プロフェッショナル同士の信頼関係が生み出した必然の結果として、継続的な紹介を得られるようになるのです。

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監修者情報

H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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