【不適切な土地利用をどう規制する?】国土法の見直し検討で示された新たな方向性

【不適切な土地利用をどう規制する?】国土法の見直し検討で示された新たな方向性

自社で保有する土地を売却する、あるいは媒介依頼を受けている土地を取引する場合、購入者に対して土地の購入目的を必ず聞き取る、あるいは可能な限り聞き取ることを意識している不動産業者の割合は、それほど多くないかもしれません。

これは、宅地建物取引業法や民法など、不動産取引に係る法律に、土地の具体的な利用目的を一律に聞き取ることを義務付ける明確な規定が存在していないからです。

ただし、「取引を行う目的」と「購入した土地をどのように利用するのか」という区分は、明確に理解しておく必要があります。

宅地建物取引業者には、犯罪収益移転防止法に基づき、顧客の「取引を行う目的」などを確認する義務があるからです。

それだけに、実務においては取引の目的や購入理由を質問して、ある程度は明らかにしておくことが求められるのです。

これは、犯罪収益の移転を未然に防止する意味もありますが、それと同時に、各種法令等の制限に抵触しかねない建物の建築を未然に防止する、あるいは予定する建物を建てられない可能性をあらかじめ確認しておく意味合いもあります。

特に、都市計画区域外や市街化調整区域などにおいては、不法な廃棄物置場や使用済みの金属などを保管するスクラップヤードといった、安全に対する懸念や騒音、悪臭といった悪影響を生じさせる施設に利用されることを防止する目的もあります。

もちろん、買主に質問したからといって、虚偽の回答を防止することはできません。

回答の真偽を問いただすにも限界があります。

しかし、確認をしたという事実が、問題の発生した際、解決に向けての拠り所となり得ます。

例えば、筆者が暮らす北海道においては、近年スキーリゾートとして諸外国にも知られるようになったニセコ周辺の羊蹄山麓で、無許可の森林伐採や違法建築が確認され問題となっています。

さらに、札幌市南区では、市街化調整区域に無許可で獣舎などを建て20年間にわたり営業を続けてきた民間動物園に対し、札幌市が都市計画法に基づく違法建築物の「除却命令」を発し、話題となりました。

同様の事例は全国いたるところで確認されますが、問題が表面化した時には土地の売主や、取引を媒介した業者に、「なぜ売ったのか」「なぜ取引を媒介したのか」という批判が殺到する可能性があります。

先述したように、買主の動機や目的のヒアリングを一律に義務付ける明確な規定が設けられていない一方で、道義的責任が問われる可能性はあるのです。

このように、売却後に問題が表面化した際のリスクを考慮すれば、購入の目的を確認しておく重要性は極めて高いと言えるのです。

さらに、国土交通省は2026年8月7日、土地の取得や利用の規制を強化するべきだとする有識者会議の提言を公表しました。

提言の公表は、国土交通省が国土利用計画法の見直しを検討していることの表れとも考えられるため、今後の法改正の動向については注視する必要があるでしょう。

とはいえ、通常の不動産取引において国土利用計画法(以下 国土法)の届出が必要となるケースはそれほど多くないでしょう。

なぜなら、監視区域や規制区域を除けば、市街化区域で2,000㎡以上、その他の都市計画区域で5,000㎡以上、都市計画区域外で10,000㎡以上の面積要件が設けられているからです。

そのため、国土法についての基礎的な知識は有していたとしても、実際の届出は一回も行ったことがないという方は多いのです。

ですが、国土交通省が制度の見直しを検討し、規制の強化を含む方向性を示している以上、私たち不動産業者は少なくとも、有識者会議において何が問題視されたのか、問題を解決するための手段として、どのような提案がなされたのかを理解しておく必要はあるでしょう。

本稿では有識者会議の提言を紹介するとともに、なぜ国土法の見直しが必要とされているのかについて解説します。

国土法の目的と概要

ご存じのとおり、国土法は国土の適切・効率的な利用の妨げとなる土地取引や、地価の上昇を招く恐れのある土地取引について、様々な規制(届出・許可)を設けることで総合的・計画的に利用を図ることを目的に制定された法律です。

届出および許可の面積要件は下記図に記載されたとおりですが、研修会などで国土法について解説すると、「一筆の土地に対する面積要件」であると誤解している方を見受けることがあります。

そもそも、国土法における面積要件は「買いの一団」とされており、一連の計画の下で権利を取得する予定または可能性のある「ひとまとまりの土地」を対象としています。

つまり、例え取得時期が異なったとしても、購入した土地が「一団の土地」となる場合には、届出が必要となるのです。

この規定は、道路などによって物理的に分断された場合においても、一体として利用することが可能であれば、同様に適用される場合もあるのです。

この規定は、国土法の面積要件を理解するうえで不可欠な内容ですから、正確に理解しておきたいものです。

もう一つ確実に押さえておきたいのが、「事後届出制」「注視区域(事前届出制)」「監視区域(事前届出制)」「規制区域(許可制)」の区分です。

このうち、事後届出制は全国で一般的に適用される制度ですが、事前届出を要する注視区域と監視区域は、いずれも地価の上昇によって、適切かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがある場合、都道府県知事または政令指定都市の長が指定する区域です。

特に監視区域における面積要件は、規則で定められた面積以上とされるため、注意が必要です。

さらに、規制区域では面積要件自体が設けられていないため、全ての土地取引において、事前の許可が必要となります。

もっとも、注視区域については平成10年の国土法改正以降、指定された区域は存在せず、さらに規制区域については、国土法の施行(昭和49年)以来、現在まで指定された区域は存在しません。

また、監視区域についても令和7年1月5日現在、東京都小笠原村の一村で500㎡以上とされているのが確認されるのみです。

したがって、そのような地域区分が存在するといった程度で理解しておけば、実務で問題が生じることはないでしょう。

さて、それではなぜ国土交通省が国土法の見直しを検討するに至ったのでしょうか。

それは、冒頭でも触れたように、必要な法令手続きをとらずに開発を行う、あるいは周辺に悪影響を与える土地利用を行うなどの事例に対し、建築や土地の利用が開始されてからでは対応が極めて困難であるからです。

例えば、序章で札幌市南区において、市街化調整区域に無許可で獣舎などを建て20年間にわたり営業を続けてきた民間動物園の例を紹介しましたが、札幌市は、何も20年間具体的な対応をしてこなかったわけではありません。

約20年間で計21回以上、文書や口頭で行政指導や是正を重ねてきたのです。

「回数が少なすぎたのでは」との指摘も見受けられますが、最終手段でもある「行政代執行」を実施した場合、解体費用を確実に回収できるかといった問題が懸念されます。

なんせ、建物の数は180棟を超える規模に膨らんでいたのですから。

さらに、違法に建築された施設の大半が獣舎であるという点も問題でした。

行政代執行をするにしても、動物の移転先をどうすれば良いのかという問題が付きまとうからです。

札幌市は、令和8年8月1日現在で人口1,962,596人を擁する政令指定都市ですから、大規模な行政代執行を行うだけの行政能力を備えているといえます。

しかし、人口が少ない地域においては、行政代執行による解体費用が回収できなければ財政に多大な影響を与える可能性があるでしょう。

つまり、無許可建築や違法な土地利用については、問題が深刻化してから是正するのではなく、取引時点で関与する仕組みを強化するのが、最も確実で現実的な選択肢となり得るのです。

こうした問題意識が、今回の有識者会議における提言や、国土法の見直しを検討することにもつながっているのです。

現行国土法の問題点

国土法は、用途を問わず全国の土地を規制対象とする一般法であるため、早期に情報を把握することで、包括的に対処できるという特性を有しています。

もっとも、注視・監視・規制といった制度については、現在において適用される場面が極めて限定的となっているため、全国で一般的に適用されているのは事後届出制です。

2021年からの総土地取引件数は150万件前後と、取引件数自体が高い水準で推移しており、それに連動するかのように、国土法事後届出件数も増加しています。

ちなみに、2025年の事後届出件数は18,591件でした。

総取引件数に占める事後届出件数の割合は1%程度に過ぎません。

これは、国土法の届出制度によって行政が把握できる土地の取引が、ごく一部に限られてしまうという問題を内包しています。

そもそも、前述したように国土法の届出は、土地の投機的取引や地価の高騰による弊害を防止するとともに、適正かつ合理的な土地利用が確保されることを目的としています。

そのため、土地の取得後における具体的な利用については、森林法、農地法、建築基準法、都市計画法など、それぞれの法律によって個別に規制するというのが基本的な枠組みとなっているのです。

しかし、ここにこそ現行制度の難しさが存在します。

個別の法令によって明確に禁止されている行為であれば、行政もその法令に基づいて対応できます。

しかし、個別法令の規制対象から外れている場合には、他法令で問題とされていることを理由に所轄する法令上の許可や登録を拒否できるとは限らないため、個別法令の要件を満たしている限り、許可や登録が認められてしまうといった問題が生じる可能性もあるのです。

実際、先述した札幌市南区の無許可獣舎については、建物を建築したこと自体が違法行為です。

しかし、開業当初は無届けであった「第一種動物取扱業」に関しては、開業翌年の2006年5月に届出がなされ、行政指導を経たうえで登録が認められています。

さらに、食品衛生法や旅館業法に基づく営業許可も認められているのです。

それぞれの部署は、「他法令違反を理由として、自らが所轄する法令上の許可や登録を拒否することは困難」との見解に基づき、おそらくは致し方なく許可を与えたのでしょう。

実際、マスコミからのインタビューに対しても、そのような趣旨の回答がなされているのを確認できます。

しかし、個別法令のうち一つでも許可が与えられた、あるいは登録が認められている場合、事情を知らない方に対して、行政がお墨付きを与えたとの印象を与えかねません。

実際、個別の法令がそれぞれ適切に運用されていたとしても、土地の取得から開発、建築、営業開始までを一体として捉えた場合、行政が土地利用全体を把握することが難しいという問題が生じているのです。

それだけに、土地取引の段階から包括的に土地の利用目的を把握し、利用開始前に必要な対応につなげられる可能性を持つ国土法の機能を見直す必要性が指摘されているのです。

国土法の申請書類の一つである「土地売買等届出書」には、利用目的についての記載箇所が設けられています。

近年の届出においては、「生産施設」と記載される割合が増えていると報告されているものの、生産施設との表現には、電気・ガス等供給施設、工場、資材置場などの利用類型が内包されているため、記載された内容のみでは、具体的な利用目的を十分に把握できない状態となっています。

また、「資産保有・転売等目的」とされるものが一定数あるとされていますが、いずれについても、届出後の具体的な利用動向が把握できない状態だと言えるのです。

そこで国土交通省は、有識者会議に先立ち地方公共団体への聞き取り調査を実施したところ、次のような実態が各地で確認されたとしています。

  • 住宅地に近接する土地で廃棄物や土砂の積み上げが行われたり、スクラップヤードが建設されたりすることで、安全面への懸念や、騒音、悪臭、水質汚濁など周辺への悪影響が生じている。
  • 住宅地に近接する土地が大型車両の駐車場として利用されることで、周辺住民から 生活環境などへの懸念の声が上がっている。
  • 法令に基づく許可等の手続を経ずに大規模な森林伐採や開発が行われ、周辺の自然 環境等に悪影響を及ぼしている

これらの問題の中には、土地取得時に利用目的の把握が十分に行われないまま取引が進み、土地の開発や使用収益が開始された段階で初めて発覚するものがあります。

その結果、行政の対応が後手に回っているケースもあるのです。

このような問題の発生を防止するには、どのような方法があるのでしょうか。

そこで次章では、国土法が抱える課題を整理したうえで、それに対して有識者会議でどのような提言がなされたのかを具体的に見ていきたいと思います。

国土法の課題と提言

数多く存在する個別法令の中で、国土法は地域や地目などの用途を問わず、取引段階の情報を把握できる機能を有した一般法です。

つまり、法を横断し、土地利用に基づく問題を未然に防止できる可能性を持つ、極めて特徴的な法令だと言えるでしょう。

ですが、万能とまでは言えません。それは、次のような課題を有しているからです。

  • 面積要件:届出面積が大規模なものに限られているため、土地取引に係る情報の把握範囲として不十分な面を有しています。
  • 無届問題:届出対象となる売買契約を行った場合、土地の権利取得者は契約締結をした日から2週間以内(契約締結日を含む)に届出をしなければなりません。これに違反した場合、あるいは虚偽の届出を行った場合には、6か月以内の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される可能性があるのです。しかし、それでも届出されない事案が存在しています。
  • モニタリングの問題:届出が行われた後に土地の利用目的が変更されても、それを把握する手段が確立されていません。
  • 隙間問題:土地利用に関する一般法ではあるものの、個別法で明確な規制対象とされていない、いわゆる「隙間」に対しては、機動的な対処ができません。
  • 権限主体が抱える問題:複数の制度に関係する事案においては、その権限主体が国・都道府県・市町村に分かれます。その場合、相互の情報共有や連携が十分でなければ、適切に機能しない可能性が高まります。
  • 拘束力の問題:国土法の実施主体は地方公共団体ですが、必ずしも実情に応じた的確な対処・指導監督をするための体制が確立されているとは限りません。独自の条例や指導要綱を制定・策定してはいるものの、特に指導要綱については法的拘束力に限界があるため、あくまで任意の協力を求める内容となっています。そのため、効果に自ずと限界が生じているのです。

これらの問題は、それぞれが独立して存在するのではなく、土地取引の情報を十分に把握できないことに加え、把握した後の利用状況を継続的に確認できず、さらには個別法における規制の隙間や行政主体間の連携といった問題が重なることで生じています。

これらの問題を解消するために、次のような提言がなされています。

  1. 土地利用の在り方に係る基本的な考え方の提示
    国が土地利用の在り方に係る基本的な考え方を示し、適正な土地利用を確保するうえで必要となる指針を具体的に示す。
  2. 土地利用に係る情報把握の強化
    国土法の届出対象面積を引き下げるなど、取引段階における情報把握の強化を図る。
    さらに、届出後に利用目的を変更した場合は再届出を求めることとし、土地利用の継続的なモニタリングを可能にする。
    また、国が届出対象面積未満の土地取引情報についてデータベースを整備し、地方公共団体へ提供する仕組みを構築する。
  3. 不適切な土地利用等への対応
    都道府県における指導監督の根拠は、国が策定した「国土利用計画」を基本として策定された「土地利用基本計画」です。
    そのため、国土利用計画に「不適切な土地利用」に該当する行為を具体的に明示し、指導監督などの対応につなげることができるようにすべきだとの提言がなされています。
    また、無届事案を把握するため、登記情報を照合して現地調査に入るなど、具体的な対応を強化すべきであるとの意見も出されています。
  4. 役割分担と支援体制
    国・都道府県・市町村の役割に応じた分担・連携体制を構築し、実行的な対応を実現する。
    この実現に向けて、国がガイドラインを策定すると同時に、相談対応の充実、データベースの構築などを行い、地方公共団体を積極的に支援すべきとの提言がなされています。

これらの提言はいずれも、国土法が取引時点で関与できる一般法であるとの性質に着目し、制度の見直しを行うことで、不適切な土地利用を未然に防止することが可能となるとの考え方に基づいています。

実際に法改正が行われるか否かは未確定ですが、今後、ガイドラインの策定や不適切な土地利用の具体化などが進められる可能性があるため、動向について注視する必要があるでしょう。

私たち不動産業者は、なぜ国土法の見直しが検討されているのか、その理由を正確に理解したうえで、取引に関与する土地について購入目的を聞き取り、予定されている利用方法が各種法令に抵触しないかを確認するなど、相応の備えが必要だと言えるのです。

まとめ

序章で触れたように、購入者に対して土地の購入目的を必ず聞き取る、あるいは可能な限り聞き取ることを意識している不動産業者の割合は、おそらくではありますが、それほど多くはないでしょう。

これは、利用目的を一律に聞き取ることを義務付ける明確な規定が存在していないからでもあります。

さらに、質問した場合において確実に真実が語られるとも限らず、引き渡し後にどのように活用されているかを確認する義務も、不動産業者に求められているわけではないからです。

ですが、例えば住宅地に存在する土地を取引し、その後スクラップヤードとして利用されれば、騒音や悪臭、水質汚濁など周辺への悪影響を生じさせる可能性があるでしょう。

その場合、「一体、誰が売ったんだ(あるいは取引に関与した)」と、原因を造った標的にされかねません。

もちろん、直接的な責任を問われるとは限りません。

しかし、地元密着で営業展開している場合、風評被害を受ける可能性は否定できません。

そもそも、そのように利用することを事前に把握していたのなら、取引に関与しないとの選択も可能であったでしょう。

これは、取引の相手方が反社会的組織と断定できなくても、限りなくグレーであると見なされる場合には、取引に関与しないと判断することと同様です。

だからこそ、土地取引においては、法令上の義務があるか否かだけを基準に判断するのではなく、購入者が土地をどのように利用する予定なのかを可能な限り確認しておくことが重要だと言えるのです。

この意識が、売主や媒介業者自身を将来的なトラブルから守ることにつながるのです。

本稿で解説した国土法の見直しが、今後どのように進むのかは現時点において確定していません。

しかし、土地利用をめぐる問題を取引段階から把握し、未然に防止しようとする方向性が示されていることを踏まえれば、私たち不動産業者には土地取引に関与するだけではなく、その先にある「利用」についても目を向ける必要があると言えるのです。

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監修者情報

H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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