Z世代に「押し売り」は通用しない。成約率を上げるためのこれからの営業クロージング方法とは?

Z世代に「押し売り」は通用しない。成約率を上げるためのこれからの営業クロージング方法とは?

営業の世界では、「クロージング」が重要だと言われ続けてきた。

特に賃貸仲介では、内見後や商談の最後にどのような一言をかけるかによって申込率が大きく変わることも珍しくない。

しかし、ここ数年で感じるのは、そのクロージングの考え方自体を見直す必要があるということだ。

理由はシンプルである。

ユーザーの意思決定方法が大きく変化しているからだ。

かつては、不動産会社が持っている情報量が圧倒的に多かった。

ユーザーは物件情報を知るために店舗へ来店し、営業担当者から説明を受け、その場で比較検討を行っていた。

そのため営業担当者は情報を提供し、ユーザーの意思決定を支える存在だった。

しかし現在は違う。

物件情報はポータルサイトで閲覧でき、街の雰囲気はYouTubeやSNSで確認できる。

さらにAIを使えば条件整理や比較検討までできる時代になった。

つまり、多くのユーザーは営業担当者に会う前に意思決定の7〜8割を終えているのである。

だからこそ、「今日決めましょう」「人気物件なので急がないとなくなります」といった従来のクロージングだけでは響きにくくなっている。

もちろん空室が埋まる可能性を伝えることは必要だが、それだけでは申込みにはつながらない。

では、Z世代を中心とした現在のユーザーは、どのように意思決定をしているのだろうか。

まず特徴的なのは、検索よりもSNSを活用することである。

InstagramやTikTok、YouTubeで情報を集め、企業広告よりも一般ユーザーの口コミや体験談を参考にする。

そして複数の情報を比較し、「失敗したくない」という意識を持ちながら慎重に判断する傾向が強い。

また、タイムパフォーマンスも重視される。

長い営業トークよりも、自分に必要な情報を効率よく知りたいと考える人が多い。

そして最も大きな特徴は、「誰から借りるか」ではなく、「誰の説明なら信頼できるか」を重視することである。

同じ物件でも、「この担当者なら安心できる」と感じたときに意思決定するケースが増えている。

つまり、クロージングとは申込みを迫る技術ではなく、納得してもらうための技術へ変わってきているのである。

では、賃貸仲介ではどのようなクロージングが求められるのだろうか。

まず重要なのは、最後に申込みを勧めるのではなく、不安を確認することである。

「申し込みますか」ではなく、「一番気になっていることは何ですか」と尋ねる方が効果的だ。

申込みに至らない理由は、初期費用や通勤時間、設備、家族への相談など、一つの不安であることが多い。

そのポイントを把握できれば、その場で解決できる可能性は高まる。

次に有効なのが、選択肢を提示するクロージングである。

「申し込みますか」ではなく、「駅までの近さを優先するならA、設備を優先するならBですが、○○様ならどちらが生活スタイルに合いそうでしょうか」と問いかける。

すると、ユーザーは申し込むかどうかではなく、自分に合った物件を考え始めるため、心理的な負担も小さくなる。

また、第三者の評価を活用することも重要である。

営業担当者が「おすすめです」と言うよりも、「同年代のお客様から収納の使いやすさや立地を評価いただくことが多いです」と伝える方が説得力は高い。

口コミを重視する世代だからこそ、第三者の評価は安心材料になる。

さらに、データを使った説明も欠かせない。

「人気があります」という曖昧な表現ではなく、「この家賃帯で同条件の募集は現在〇件です」といった客観的なデータを示すことで、ユーザーは納得しやすくなる。

AIや不動産データが発達した今だからこそ、営業担当者も経験や勘だけではなく、客観的な情報を伝えることが求められる。

もちろん希少性を伝えることも必要だ。

ただし、その伝え方は変えるべきである。

「今日決めないとなくなります」と煽るのではなく、「昨日もお問い合わせがありました。現在申込みは入っていませんが、早い者勝ちの状況です」と事実だけを伝える方が信頼につながる。

誇張した営業トークは、かえって警戒される時代になっている。

また、メリットだけではなくデメリットも正直に伝える姿勢が重要である。

「駅から近い反面、朝夕は交通量があります」「収納は少し小さいですが、その分リビングは広く取られています」といった説明は、「正直に話してくれる担当者」という印象を与える。

結果として信頼が生まれ、申込率の向上にもつながる。

契約後の安心感を伝えることも大切だ。

契約がゴールではなく、「入居後もLINEで気軽に相談してください」と伝えるだけで、ユーザーの安心感は大きく変わる。

特に若い世代は、契約後のサポート体制も意思決定の一つの材料として考えている。

そして最後に最も重要なのが、「比較してください」と伝える勇気である。

現在は他社と比較することが当たり前の時代だ。

「他社も比較したうえで、一番納得できる会社を選んでください」と伝えられる担当者の方が、結果として信頼されることも多い。

営業担当者が勝負すべきなのは、他社へ行かせないことではない。

比較された結果、「この担当者が一番信頼できる」と思ってもらうことである。

これからの営業に求められるのは、申込みを取る技術ではなく、ユーザーが安心して意思決定できる環境をつくる技術である。

情報格差が小さくなった今、営業担当者の価値は「知識量」ではなく「納得感を提供できる力」にある。

ユーザーの意思決定が変われば、営業のクロージングも変わる。

これから成果を出す営業担当者は、契約を急がせる人ではなく、納得して住まいを選ぶ手助けができる人なのである。

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監修者情報

株式会社南総合研究所 代表取締役 南 智仁
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