【宅建業法】自己の所有に属しない物件(他人物)の売買制限とは?契約可能な例外ケース

不動産営業の実務において、宅地建物取引業者(つまり不動産会社ということ)が自ら売主となる際、「まだ完全に自分のものになっていない物件を、先にお客様に売ってしまってよいのか」と悩む場面があるかもしれません。
宅地建物取引業法(つまり不動産業界のルールブックということ)では、原則として自己の所有に属しない物件の売買契約を禁止しています。
しかし、一定の条件を満たせば例外的に契約が可能になるケースも存在します。
本記事では、この他人物売買の制限ルールと、例外的に契約が可能となるケースについて、初心者にもわかりやすく噛み砕いて徹底解説します。
結論から言うと?「他人物売買の制限」ルールのキホン
結論として、不動産会社は「まだ自分が確実に手に入れられると決まっていない他人の物件」を、自ら売主となって一般のお客様に売る契約を結ぶことはできません。
ただし、すでに元の持ち主から買い取る契約を確実に済ませている場合や、未完成の物件で手付金の保証ルールを守っている場合は、例外として売買契約が認められます。
これは、人気アイドルのコンサートチケットの販売に例えるとわかりやすいでしょう。
「チケットが取れるかどうかわからない状態」で、先にお客様からお金をもらって売る約束をするのは、もし取れなかった時にお客様に大迷惑がかかるためルール違反です。
しかし、「すでにチケットの購入手続き(取得契約)が確実に完了していて、あとはチケットが手元に届くのを待つだけ」という状態であれば、別のお客様に売る約束をしても確実にお渡しできるため、例外として認められるのと同じ仕組みです。
そもそも自己の所有に属しない物件(他人物)とは?
自己の所有に属しない物件(つまり自分以外の他人が所有している物件ということ)とは、現在、第三者が登記上の所有者となっており、不動産会社がまだ所有権を取得していない宅地や建物のことを指します。
民法(つまり市民生活の基本ルールの法律ということ)においては、他人の物を売買する契約自体は有効とされています。
しかし、不動産取引においては動く金額が非常に大きいため、もし不動産会社が元の所有者から物件を買い取れなかった場合、買主(お客様)は物件を手に入れられないうえに、支払った手付金なども返ってこないという大損害を被る危険性があります。
そのため、宅建業法では一般の消費者を保護するために、不動産会社が自ら売主となる場合の他人物売買を原則として厳しく禁止しているのです。
他人物の売買が例外として認められる「2つのケース」
ただし、買主が損害を受けるリスクがないと判断される以下の2つのケースに該当する場合は、宅建業法第33条の2の規定により、例外として自己の所有に属しない物件であっても売買契約(予約を含みます)を締結することが認められています。
例外1:すでに物件を取得する契約を結んでいる場合
不動産会社が、現在の所有者との間で、その物件を取得する契約(買い取る契約)をすでに締結している場合は、お客様に売買することができます。
すでに取得契約が完了していれば、不動産会社が確実に物件を手に入れてお客様に引き渡せる可能性が極めて高いためです。
この際、不動産会社が元の所有者と結んだ取得契約は、代金の支払いや物件の引き渡しが終わっていなくても、「契約が成立」さえしていれば例外の対象として認められます。
例外2:未完成物件で「手付金等の保全措置」を講じた場合
これから建築される新築の建売住宅やマンションなど、宅地の造成や建築に関する工事の完了前の物件について、宅建業法第41条第1項に基づく手付金等の保全措置(つまり万が一会社が倒産してもお客様にお金が全額返ってくるよう第三者に保証してもらう仕組みということ)を講じている場合は、例外として契約が認められます。
未完成物件は、契約時点ではまだ建物が存在しておらず、厳密には不動産会社の所有物ではないため他人物にあたりますが、保全措置を講じることでお客様の支払うお金が守られるため、契約が可能となります。
| 例外となるケース | 理由と条件 |
|---|---|
| 物件を取得する契約を締結済み | 確実にお客様に引き渡せる可能性が高いため |
| 未完成物件で保全措置を講じた | お客様の支払う手付金等が確実に守られるため |
実務での注意点!こんな契約は例外にならず「違反」になる
例外として認められるケースでも、いくつか実務上陥りやすい落とし穴があります。
国土交通省のガイドラインに基づき、以下の場合は例外と認められず、宅建業法違反となるため注意が必要です。
「効力の発生が条件に係る」取得契約はNG
不動産会社が元の所有者と物件を取得する契約を結んでいたとしても、その契約が「効力の発生が条件に係るもの(つまりある条件が達成された時に初めて契約の効力が発生するという約束のこと)」である場合は、例外とは認められず、お客様に売ることはできません。
これを法律用語で停止条件と呼びます。
例えば、「銀行の融資が通ったら、この物件を買い取ります」という条件付きで元の所有者と契約している状態では、もし融資が通らなかった場合に物件を取得できず、お客様に引き渡せないリスクが残るためです。
また、農地法(つまり農地を守るためのルールの法律ということ)第5条の都道府県知事の許可を条件とする売買契約も、許可が下りない可能性があるため「効力の発生が条件に係る契約」に該当し、お客様への転売は違反となります。
取得契約の証明は「書面」で行うのが実務の鉄則
ガイドラインによれば、売買契約の締結自体は民法上は口頭でも可能ですが、宅地建物を取得する契約の存在は「不動産会社が立証しなければならない」とされています。
そのため、「口約束で買い取ることを決めていた」という言い訳は通用せず、実務上は必ず書面による取得契約書を交わしておくことが強く求められます。
このルールがあるメリット・デメリット
自己の所有に属しない物件の売買制限ルールがあることには、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
買主(お客様)側
「お金を払ったのに、不動産会社が物件を仕入れられなかったため家が手に入らない」という最悪の詐欺的トラブルや取引の頓挫を未然に防ぐことができ、安全に高額な不動産を購入できる。
不動産会社側
手付金等の保全措置を講じることで、建物が完成する前の段階から合法的に販売活動を開始し、早期に資金を回収することができる。
デメリット
不動産会社側
魅力的な物件を見つけてすぐにお客様に紹介したくても、まずは元の所有者と確実な無条件の取得契約を結ばなければならないため、見切り発車での営業活動ができず、契約の手続きにスピードと正確性が求められる。
まとめ:確実な権利を確保してからお客様に販売しよう
宅建業法における「自己の所有に属しない物件の売買制限」は、不動産会社が確実に手に入れられるかわからない物件を売ることで、お客様が損害を被るのを防ぐための重要なルールです。
不動産営業において、物件の仕入れと販売のタイミングを見極めることは非常に重要ですが、お客様を危険に晒すような見切り発車は法律で固く禁じられています。
ルールの趣旨を正しく理解し、確実な権利関係を整えた上で、安心・安全な取引を提供できるプロフェッショナルを目指しましょう。
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