【知識なき営業は淘汰される?】激変するリフォーム市場と顧客ニーズの変化

【知識なき営業は淘汰される?】激変するリフォーム市場と顧客ニーズの変化

媒介営業は不動産取引の専門家です。

したがって、建築知識は必ずしも必須ではないとの認識が一般的です。

ですが、近年における新築分譲価格の高騰に伴い、既存住宅を購入しリフォームして快適に暮らしたいと希望する顧客が増加しています。

そのため、リフォームに関する基礎知識を有し、かつ信頼できる業者を確保したうえで適切なアドバイスをするだけでも、交渉を有利に進めることが可能になります。

そして、適切な助言をするためにはリフォーム市場の規模や動向を把握しておくことが不可欠です。

まず、令和8年3月11日に国土交通省から公表された「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」からは、四半期ごとにばらつきはあるものの年度別の比較では受注額が増加傾向にあるのが見てとれます。

国土交通省,建築物リフォーム・リニューアル調査報告

さらに、住宅リフォーム業界唯一の専門誌である「リフォーム産業新聞」の推計によれば、2024年の市場規模は前年比約9%増となる約6.7兆円まで拡大し、周辺商品や関連支出を含めると約7.6兆円規模に達したとされています。

もっとも、近年では中東情勢の悪化に伴う影響によって建築関連資材、例えば防水材や断熱材、接着剤、溶剤系塗料の供給に問題が生じ、値上げや新規受注の停止、あるいは納期未定などの状態が確認されています。

くわえて、2024年4月からの「働き方改革関連法(時間外労働の上限規制)」、いわゆる「2024年問題」の影響によって深刻な人手不足が加速し、人件費が高騰しているため、「受注高=請負件数の増加」とは一概に判断できません。

請負総額が増加しても、物価・工賃上昇による単価増による影響があるため、受注件数ベースでは横ばい、あるいは微減している可能性があるからです。

ですが、このような変化に伴い、発注者が希望するリフォーム工事の内容に変化が生じている点については、着目する必要があります。

従来は、断熱性や耐震性の改善より見た目や使い勝手を重視する傾向が見受けられました。

しかし、近年では限りあるリフォーム予算を有効に活用するため、省エネ性や耐久性の向上が重視されているのです。

このような変化を、私たちは見逃してはなりません。

顧客にとって有益なアドバイスをするためには不可欠な情報だと言えるからです。

本稿では、現在リフォーム市場でどのような変化が表れているのか、その理由も含め検証していきたいと思います。

数字で読み解くリフォーム市場の「光と影」

序章で触れた通り、リフォーム市場は一見すると右肩上がりの成長を続けている印象を受けます。

しかし、現場の最前線に立つ媒介営業が表面上の数字だけを鵜呑みにすると、顧客との商談で大きな「乖離」を生むリスクがあります。

そのため、第一章では統計データに隠された実態を深堀りしていきましょう。

1.「6.7兆円」の内実と単価上昇の構造

リフォーム産業新聞が推計した2024年の市場規模である約6.7兆円という数字は、額面だけを見れば過去10年の中でも高水準に位置しています。

しかし、これだけを根拠に「リフォームをする世帯が増えた」と結論付けるのは早計です。

その根拠は、資材価格と人件費の高騰による「請負単価の上昇」があるからです。

2021年頃のウッドショックを皮切りに、コロナ禍からの経済回復による需要増で生じたアイアンショック、さらには昨今の原油高に伴う運送費や製造コストの上昇により、住宅設備の価格は10~20%近く押し上げられました。

かつては、平均的な坪数の住宅であれば1,000万円かければフルリノベーションできると言われていましたが、現在では同等の工事内容で見積もりを依頼すれば、1,300~1,500万円程度の見積書が提示されるでしょう。

物価高に反して実質賃金は上昇していないため、必然的にリフォームの工事内容は、見た目よりも安全性や省エネ性能など、実利を重視する傾向に変化したのです。

2.「2024年問題」が突きつけた課題

「リフォーム工事を依頼したら、対応できないと断られた」最近、このような話を耳にする機会が多くなりました。その要因は、職人を始めとする人手不足です。

リフォーム業を含む建築関連業、いわゆるブルーカラーに分類される業界は「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが定着し、特に近年の若者に敬遠される傾向にあります。

ですが問題は、人材確保の困難性にくわえ「働き方改革関連法」の施行によって、現場作業員や監督の残業時間が厳格に制限されたことです。

従来であれば人手不足でも「無理をすること」で予定工期を遵守できましたが、現在では法令を遵守すれば予定工期内での竣工は不可能というジレンマに陥っているのです。

工期が伸びれば人件費はかさむ、さらに建築関連資材は高騰し部材によっては納期が未定、それらを見越して見積もりを作成すれば受注を得るのが困難。

このような岐路にリフォーム業者のみならず、多くの建築関連事業者が陥り疲弊しているのです。

実際に帝国データバンクは、2025年に発生した「建設業」の倒産件数を前年比6.9%増の2,021件であると公表し、2,000年以降で初となる4年連続での増加であると報じています。

帝国データバンク,「建設業」の倒産件数・負債総額の推移

この状況は2026年に入っても改善されず、例えば2026年3月の建設業倒産件数は191件と、前年同月に比べて11.7%増加しています。

この件数は2025年度において月次ベースで最多となっており、帝国データバンクは倒産の主因を、中小・零細企業が資材価格や外注費の上昇分を工事価格に転換できない、販売不振や売掛金回収困難などの「不況型倒産」と見ています。

3.地政学リスクと「納期」の不確実性

中東情勢の緊迫化や円安の影響は、原材料の調達を極めて不安定にしています。

特に防水材や接着剤、塗料といった石油化学製品を原料とする製品は、国際情勢の変化がダイレクトに供給量や価格に直結します。

化学製品の供給が滞れば、システムキッチンやユニットバスなどを製造する工場は納期未定、あるいは新規受注の受入停止を余儀なくされます。

媒介業者としては、物件購入後すぐにリフォームしたいと希望する顧客に対して適切なアドバイスができるよう、常に最新の「資材納期情報」をキャッチアップしておく必要があります。

このように、市場の拡大を「需要の増加」と単純には受け取らず、「コスト増に伴う膨張」という「影」の側面があることを理解したうえで、顧客の予算とスケジュールをコントロールする専門性が求められるのです。

「化粧から体質改善へ」進む顧客ニーズのパラダイム・シフト

第一章で述べたコスト高騰や工期の長期化という逆風は、皮肉にも顧客の「住まいに対する価値観」を劇的に変化させる契機となっています。

かつてのリフォームは古くなったものを新しく見せる、いわば「化粧」の側面が強いものでした。

しかし、2026年現在の市場においては、より根源的な「体質改善」への要求が高まっています。

1.「性能向上リフォーム」が選ばれる合理的な理由

新築分譲価格が一般所得層の手が届かない領域にまで高騰した結果、既存住宅は「消去法に基づく選択」ではなく「自身が望む暮らしを実現するための合理的な素材」へと昇格しました。

この層が最も敏感に反応しているのが、暖房光熱費に直接影響を与える「省エネ性」や、家族の安全を守るためには必須の「耐震性」です。

異常気象とさえ言える近年の酷暑は、電気・ガス料金の高騰と相まって、断熱性能の欠如が家計と健康に直結することを消費者に知らしめました。

その結果、既存住宅の内見に応じた際、顧客から「この住宅の断熱等級は何級相当か」あるいは「サッシは樹脂製か、アルミ樹脂複合か」、「地域区分で等級5をクリアしたいが、どのくらい費用が必要か」といった、従来では予想すらできなかった質問が寄せられるケースが確認されています。

国土交通省,ラベル項目の解説

この質問に回答するためには、少なくともUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)を正確に理解するのは必然で、可能なら熱抵抗R(単位:㎡・K/W)、熱貫流率U(単位:W/(㎡・K)、日射取得率ηといった単位の意味や、断熱材の種類と特性、窓の種類と性能などの理解を深めておくのが理想です。

国土交通省,ラベル項目の解説

加えて、暖冷房設備の能力値や換気・給湯・照明設備に関する知見を深めれば盤石ですが、これらは従来であれば建築のプロのみが対応可能な領分で、媒介営業に必要とされる知見ではありませんでした。

しかし、インターネットの普及によって情報格差は縮小されたのです。

実際、リフォーム検討時に重視する点は「省エネ性能の向上が見込めること」の割合が最も高く、2年連続で上昇しています。

その一方で、見栄えや「設備の使い勝手が良くなること」については下降しているのです。

2025年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査報告書

さらに、費用面だけではなく、「リフォーム工事後の不具合への対応」や「施工が適切に行われているか」といった不安を感じている方が増加傾向にあることも看過してはなりません。

このような顧客の不安を払拭するためには、理論武装が必要不可欠です。

かつては「キッチンが新しく綺麗になれば満足」としていた顧客が変化していることを理解して、物件や資金計画の説明のみならず、性能の向上を実現するために必要なリフォーム工事の概要や予算、さらにはランニングコストまで含めたトータルでの提案力が成約の鍵を握るようになったのです。

2.補助金制度を武器にする

政府は、増加に歯止めがきかないストック住宅の存在が抱える諸問題、例えば管理不全空家の抑制を実現するため、ストック住宅の利活用を強力に後押ししています。

私たち不動産業者なら当然に理解していますが、1968年(昭和43年)の時点で住宅総数が世帯数を上回り、量的には充足しているにもかかわらず、毎年のように住宅は建築され続けているのです。

総務省,住宅・土地統計調査

少子高齢化がさらに進展する状況下においては、ストック住宅の利活用が最大の争点となるのは間違いありません。

そのため、政府は「先進的窓リノベ事業」など、様々な大型補助金制度や税制優遇を提供して、利活用を活性化させるための施策を講じているのです。

それだけに、これらの制度を縦横無尽に取り扱える知見は、媒介営業にとって最強のロジックツールとなるのです。

補助金には次のようなものがあり、いずれも断熱性能の向上や高効率給湯設備等の導入が対象となっています。

補助金制度

補助に関する概要や申請条件を理解することで「この物件は相応の築年数ですが、給湯設備機器やサッシを交換に関しては補助金を利用でき、快適性も増します」といったアドバイスが行えるようになります。

さらに、一定のリフォーム工事を行った場合には所得税や固定資産税の軽減も受けられます。

既存住宅のリフォームに係る特例措置

このように具体的な助言を行えるようになれば、他社との差別化は決定的なものとなるでしょう。

3.耐震補強と「資産価値」の相関

性能向上と同時に忘れてはならないのが防災意識の高まりです。

日本はいわずと知れた地震大国であり、年間発生件数は約1,000~2,000回発生しています。

さらに、世界で発生するM6.0以上の地震のうち、1割以上が日本周辺に集中しています。

それだけに、震度5強で倒壊・崩壊しない旧耐震(1950年制定)ではなく、震度6から7でも倒壊・崩壊しない新耐震基準(1981年制定)、可能なら基礎の仕様や接合部、壁の配置まで考慮された現行基準(2,000年制定)に適合させるのが理想的です。

新耐震基準を満たしていれば、登録免許税や不動産取得税の軽減、さらには住宅ローン控除が受けられます(旧耐震時代に建築された建物については、適合証明書類必須)。

住宅,借入限度額,控除期間

また、国土交通省は所有者の補助に取り組む地方公共団体に対して補助を実施しているため、住宅の耐震改修にかかる費用の一部が補助対象となります。

具体的な補助額や申請条件については地方公共団体ごとに異なるため、事前の確認が必須です。

このように、税制の優遇措置や地震保険の割引、さらには将来的な売却時の査定額にも影響を与える耐震基準については、適合しているか否かが大きな分岐点となります。

性能向上リフォームは快適性の追及のみならず、「住宅の資産性を維持・向上させるための投資」であると顧客が認識するようになっています。

したがって、営業担当者は目に見える内装提案ばかりではなく、「見えない価値」を具体的に説明できるだけの知見を養う必要があるのです。

理解を深めておきたい「既存住宅✕リフォーム」の法務とリスク

顧客のニーズが「性能向上」へとシフトする中で、媒介営業が担う役割は物件紹介に留まらなくなっています。

特に、リフォームを前提とした取引においては、建物の物理的な状態や適用される補助金の概要、さらには説明時における責任範囲が複雑に絡み合います。

自身の理解が及んでいない範囲の説明を迂闊に行えば、その責任を問われる可能性があるのです。

1.インスペクションの活用と「説明義務」の境界線

物件所有者と媒介契約を締結する際には、インスペクション(建物状況調査)のあっせんに関する説明が義務付けられており、さらに重要事項説明の説明時には、購入者に対して実施の有無や結果の概要、さらに実施をしなかった場合はその具体的な理由を説明することが求められています。

さらに、買主の取引判断に重要な影響を与えると考えられる下記各書類については、所有者から提供を受け購入者に説明すると同時に漏れなく引き継ぐべきものです。

リフォーム工事,書類

リフォーム工事を検討している顧客に対しては、これらの書類を精査したうえで適切なアドバイスを行う必要があるのです。

無論、現地確認も怠ってはなりません。

例えば、基礎や主要な構造部分に重大な劣化が生じていることを見落とせば、どれほど高性能な断熱材や設備を導入しても「砂上の楼閣」となるからです。

もっとも、宅地建物取引業法で定められた調査・義務を超えてまで説明する義務は課せられていません。

重要なのは、知ったかぶりをしない、確認できない事項は正直に伝える、必要に応じて専門家をあっせんすることです。

特に、契約不適合責任の免責条項がある取引においては、リフォーム工事によって隠れた瑕疵が顕在化し、責任の所在が争点となるケースが散見されます。

私たちは説明責任と義務、そしてその範囲を正確に理解したうえで、丁寧なリスク説明を心がける必要があるのです。

2.税制優遇措置の落とし穴

第二章で触れた税制優遇ですが、ここには媒介営業が最も注意すべき「事務的な罠」が潜んでいます。

例えば、住宅ローン控除の適用を受ける場合、2024年1月以降に建築確認を受けた住宅については、原則として省エネ基準に適合していることが条件とされています。

したがって、改正建築基準法が施行される前に駆け込み申請した物件は、築浅でも控除が受けられないのです。

断熱改修工事を実施して省エネ基準に適合させれば対象となりますが、当然に「住宅省エネルギー性能証明書」などが必要となります。

また、2023年12月までに建築確認申請がなされた物件については省エネ性能が条件とされていませんが、昭和56年12月31日以前に建築された住宅については耐震基準適合証明書の提出が不可欠です。

このような時系列ごとのルールや、リフォーム資金を住宅ローンに組み込む際の諸条件など、事務的なミスが一つあるだけで控除が適用されず、顧客は多額の損失を受けることになります。

「いつ、どのタイミングで、どのような書類が必要となるか」という具体的なフローを提示することは、取引の専門家として信頼を得るためには必須だと言えるのです。

3.リフォーム工事と連動する「契約不適合責任」

リフォームを前提とした売買契約を締結する場合、特約条項の策定には細心の注意を払う必要があります。

例えば、断熱改修工事を実施するために壁を剥がした際、柱など主たる構造部分に腐朽、あるいは接合金物の数量や緊結不足が発見された場合、深刻な紛争に発展する可能性があるからです。

これらは、インスペクションのような非破壊検査では確認することができない部位です。

そのため、予測される追加工事のリスクを勘案し、取引全体の安全を担保する視点が求められるのです。

例えば、「リフォーム工事に伴い、非破壊検査では発見できない不具合が確認された場合であっても、売主はその部位について契約不適合責任を負わない」との特約を設け、物件状況等報告書の告知内容と明確に区分できるよう配慮するなどです。

信頼される「住まいのコンシュルジュ」となるために

これまで解説してきた通り、既存住宅の取扱いとリフォームは不可分な関係性にあります。

一切相談には応じず切り離すというのも、不要なリスクの発生を回避する意味において一つの戦略となりますが、顧客から真の信頼を得ることが困難となる可能性があります。

そこで、最終章では「取引に関与する人」から、顧客の理想を形にする「住まいのコンシュルジュ」へと脱皮するために不可欠な、リフォーム業者との連携術と実務の要諦について解説します。

1.施工業者との「共通言語」を持つ

媒介営業が建築士や施工管理者と同等の建築知識を持つ必要まではありませんが、少なくとも施工業者と対等に打ち合わせできる程度の知見を有し、さらにその内容を翻訳して顧客に伝えられる「共通言語」の習得は不可欠です。

特に、見積書に記載されたメーカー名や品番、グレード、数量と単位、人工(にんく)、雑費、諸経費などの数量や金額が適切かを見抜く目は不可欠です。

その点を勘案すれば「一式」表記は好ましいものではありません。

例えばキッチンを交換する場合、交換商品代や人件費以外に既存キッチンの解体処分費や給排水・ガス工事、下地補修などの計上は不可欠ですが、一式と記載されればその内訳が不明です。

したがって、見積もりを依頼する業者に対しては一式と表記しないように注意を促すと同時に、顧客に対しては、実施する工事の内訳や工程を説明できるように備えておく必要があるのです。

また、第二章で触れた「断熱性能」や「耐震補強」についても、業者からの提案が「補助金の要件を満たしているか」「さらにグレードを引き上げるにはどのような方法があるか」をチェックできる程度の知識があれば、業者から軽く見られることはなく信頼が高まり、結果として質の高いサービスを顧客に提供できるようになります。

筆者の経験上ですが、職人は特に知識のない営業を軽視する傾向が見受けられます。

的はずれな指摘を繰り返せば、やがて「素人扱い」され軽んじられるのです。

その結果、手抜きとまでは言いませんが杜撰な工事が散見されるようになるのです。

顧客に不利益が及ぶことを防止する意味でも、共通言語の習得は不可欠と言えるのです。

2.リフォーム一体型住宅ローンのハブ機能を果たす

資金計画において、媒介営業が最も力を発揮すべきは「リフォーム一体型ローン」のコーディネートです。

物件購入費用とリフォーム費用を一本の住宅ローン(リフォーム資金セット型)で組めれば、リフォームローン単体で申し込むよりも低い住宅ローン金利を利用できます。

ただし、それだけに一般的なリフォームローンより要件が厳しく、工事内容や金額の詳細が精査されます。

時に、銀行担当者から「工事内容に対して部材数量が多すぎるのではないか」といった、専門的な指摘を受けることすらあるのです。

審査担当者は、工事内容に対してどのような費用が発生するか、さらにどの程度の部材が必要であるかを把握しており、かつ平均的な単価も掌握しています。

したがって、そのような問い合わせがあった場合に備え、理路整然と説明できるだけの知見が不可欠となるのです。

それ以外にも、建築確認申請が必要となる工事については融資実行前までに建築確認済証の提出が必要であったり、物件購入後1年以内にリフォーム工事を完了する必要があったりなど、銀行ごと一定の条件が定められています。

そのため工事内容はもとより、工期や資金実行のタイミングをコントロールする「ハブ」として、媒介営業が尽力する必要があるのです。

そして、このコーディネート能力を有していることが、単なる媒介手数料以上の価値を顧客に提供する源泉となるのです。

3.記録と履歴が資産価値を担保する

リフォーム工事の実施記録は、出口戦略を勘案した場合の資産性に直結します。

特に、断熱性能向上工事や耐震改修工事を実施した際には、どの部位にどのような工事を行ったか、それにより性能がどれだけ向上したかを「修繕履歴」として正確に記録しておく必要があります。

これこそが、リセール時の資産価値に直結するのです。一般的な販売資料でよく見かけるのは、「〇〇年キッチン交換」、「〇〇年ユニットバス交換」、「〇〇年リビングクロス全面張替え」といった表記ですが、これではどのようなグレードの商品に交換されたのか、さらにはどのような機能を有しているのか判断できません。

無論、販売資料に記載できる内容は限られますから、この表現自体に問題があるわけではありません。

しかし、具体的な内容が詳細に記載された「修繕履歴」を提示できれば、購入検討者が資産価値を適切に判断できるようになります。

これこそが、近年評価されている「住まいの履歴書」です。

媒介営業は、物件を引き渡して終わりではなく、顧客がその家で刻む「住まいの履歴」について、最初の編纂者となるべきです。

取引実務だけでなく、努力して学んだ建築関連知識を武器に、論理的かつ誠実なアドバイスを積み重ねることで、顧客から「信頼」という名の、何物にも代えがたい資産を築くことができるのです。

まとめ

「媒介営業に建築知識は必要ない」という認識は、もはや過去の遺物となりつつあります。

新築分譲価格の高騰とストック住宅の利活用が加速する令和の不動産市場において、リフォームを完全に切り離した取引提案は、顧客のニーズを見誤るだけでなく、予期せぬトラブルを招くリスクすら孕んでいるのです。

何よりも、管理不全空家や所有者不明地の増加を防止するために、国土交通省が宅地建物取引業法を改正して媒介報酬規定を見直なおした事実を、重く受け止めるべきです。

これは、国が私立ちに対して、相応の報酬を得る手段を提供すると同時に、より広範な業務を遂行することに期待を寄せている証左に他なりません。

つまり、私たちには単なる物件の紹介者ではなく、性能向上や税制優遇、さらには資産価値の維持まで見据えた専門家として活動することが求められているのです。

それを実現するには、市場動向や法改正の正確な把握、法務リスクの管理、さらには専門士業、施工業者、金融機関との高度な連携が不可欠となります。

これら関係当事者の「ハブ」として機能するために必要なのは、広範な知識と、それを裏打ちする知見です。

先を見通すことが困難な時代において、日本の住宅資産を次世代へ正しく引き継ぐためには、私たちのたゆまぬ努力と研鑽が不可欠なのです。

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監修者情報

H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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