【耐震等級が同じでも違いはあるの?】覚えてきおきたい構造計算の種類と特徴

【耐震等級が同じでも違いはあるの?】覚えてきおきたい構造計算の種類と特徴

自然災害の激甚化・頻発化によって、住宅に耐震性や耐風性などの堅牢性を求める消費者が増加しています。

さらに、気候変動による影響を受け、省エネ性能に関する意識も高まりを見せています。

つまり、建物の堅牢性と省エネ性、この二つに関する知識の取得は、たとえ新築住宅を取り扱っていなくとも、媒介営業に必須の知識となりつつあるのです。

しかし、媒介営業は不動産取引の専門家ではあっても、建物の構造や建築法規についてはある程度までしか理解していないことが多いものです。

ですが、2024年4月1日以降に建築確認申請を行った建築物については、販売(再販時を含む)・賃貸時の省エネ性能表示が努力義務とされており、さらに、住宅ローン減税や各種リフォームの補助金などについても、耐震性や省エネ性能の基準をクリアすることが要件となるケースもあります。

また、建物の状況調査(インスペクション)を実施したうえで、リフォーム工事の内容や予算を検討する方も増加しているのですから、もはや、相談される立場の媒介営業が、「私たちは建築の専門家ではありませんので、ご質問に回答することはできません」といった説明だけで済ませることは難しい時代となりつつあるのです。

もちろん、理解が不足しているのを自覚しながら、誤った説明をするようなことがあってはなりません。

しかし、質問に対して適切な回答ができなければ「知識のない営業」と思われ、顧客からの信頼を失う結果となりかねないのです。

つい先日、筆者は「耐震等級3の住宅を購入するかどうかを検討しているのですが、インターネットで調べると、同じ耐震等級であっても計算方法の違いによって検証の方法や内容に違いがあると書いてあったので、営業担当に確認したところ、『耐震等級3だから安心です』と繰り返すだけで、具体的な説明はしてくれませんでした。これって、どう思いますか?」との質問を受けました。

耐震等級3の住宅

相談者は、検討中の建物が「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「性能表示制度における計算方法」によるものか、それとも柱や部材ごとの応力をすべて計算する「許容応力度計算」によるものかを質問し、さらに、計算方法の違いによって、耐震性能や評価結果、建物の設計内容にどのような違いが生じ得るのかについて、具体的な説明を求めているのです。

そのような質問に対して、ただ「耐震等級3だから安心です」と繰り返すだけでは顧客からの信頼を得ることはできないでしょう。

最悪の場合、契約機会を失う可能性すらあるのです。

住宅の耐震性・耐風性・省エネ性などを示す表現として、世間には「長期優良住宅」「低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」「耐震等級」「劣化対策等級」といった用語が溢れかえっています。

それだけに、これらの用語を丸暗記するだけのスペック営業では、情報感度の高い顧客に太刀打ちをすることはできないでしょう。

インターネットや生成AIの普及によって、「表面的な情報の入手」や「知識の量」についての格差が縮小する一方で、得られた知識や情報を評価・判断・活用する能力、いわゆるリテラシーの格差は拡大しているのです。

私たち不動産業者は、この事実を理解したうえで、自身が不動産取引のプロフェッショナルであり続けるために、正確な知識を学ぶ必要があるのです。

本稿では、耐震性・耐風性・劣化対策・省エネ性など、建物の性能を示す表現にはどのようなものがあり、それぞれ何を意味するのかについて解説します。

住宅性能を示す「等級」とは何を意味するのか

建物に関する性能を正確に理解することが目的だからといって、「長期優良住宅」「低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」を性能区分ごとに覚える必要はありません。

まずは、複数の性能を総合的に求められる「長期優良住宅」の認定基準を一つの基準として捉え、各性能項目について理解を深めておけば良いからです。

長期優良住宅の認定基準には、住宅の性能だけではなく、住環境や住戸面積、自然災害への配慮、維持保全計画なども含まれていますが、ここでは不動産営業が住宅性能を理解するうえで重要となる項目を中心に解説していきます。

長期優良住宅の認定基準

①劣化対策:長期優良住宅の新築認定では劣化対策について「等級3」かつ構造の種類に応じた基準が求められています。具体的には、木造住宅であれば床下空間の確保や床下・小屋裏の点検口を設置する、鉄筋コンクリート造であれば水セメント比やかぶり厚など、構造躯体の劣化を防止するための措置が詳細に定められています。

それだけに、不動産の営業は「劣化対策等級」という言葉だけを暗記して満足するのではなく、構造の種類に応じてどのような措置が求められるのかまで理解しておくことが肝要です。

劣化対策等級

②耐震性:長期優良住宅の新築認定では原則として耐震等級2以上が求められます。ただし、耐震等級1であっても限界耐力計算による所定の基準に適合する場合や、住宅品確法で定められた免震建築物である場合など、所定の基準に適合する場合には認定を受けられる可能性があります。

耐震性

序章で、耐震性の計算ルートには「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「性能表示制度における計算方法」と、柱や部材ごとの応力をすべて計算する「許容応力度計算」の2種類があると解説しましたが、長期優良住宅の新築認定では所定の基準を満たすことを前提として、このどちらに基づく方法を採用しても良いとされています。

とはいえ、両者は確認する対象や計算の詳細さが異なります。

これは、それぞれの計算ルートに下記のような特徴があるからです。

壁量計算:主に「必要な壁の量」、「配置のバランス」などを確認する方法である一方、個々の柱や梁にどれだけの曲げやせん断力がかかるかまでは、壁量そのものでは計算されません。

長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について

許容応力度計算:屋根や外壁の重さ、積雪、風圧力、さらには地震時に発生する水平力(せん断力)が、柱や梁、床、接合部などの各部材にどのように作用するのかを計算し、どれだけの負担が

生じるのかを確認します。

これにより、個々の部材について発生する応力が許容範囲に収まっているのかを検証します。

なお、長期優良住宅の認定においては、保有水平耐力計算や限界耐力計算など、建物の構造や採用する計算方法に応じた複数の耐震性の確認方法が認められています。

長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について,チェックポイント

だからといって、短絡的に「許容応力度計算を採用したほうが、建物の耐震性が高い」と理解してはなりません。計算方法の違いは、あくまでも建物の耐震性を評価・確認するための選択肢に過ぎないからです。

したがって、同じ耐震等級であっても計算方法によって検証すべき対象や内容に違いが生じるという点を正確に理解しておけば良いのです。

顧客に説明する場合には、これを踏まえたうえで「耐震等級が同じであっても、計算方法によって検証すべき内容が異なります。

ご希望であれば、建築士へおつなぎ致します」というように、専門家へ橋渡しをする配慮が必要だと言えるでしょう。

③維持管理・更新の容易性:長期優良住宅の新築認定では、戸建については「維持管理対策等級3(専用配管)」、マンションなどの共同住宅では「維持管理対策等級3(共用配管)」と「更新対策等級3(共用配管)」など、構造や住宅の種類に応じた基準が、それぞれ求められます。

長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について,維持管理対策等級

維持管理対策等級とは、端的に説明すれば専用(もしくは共用)の給排水管・給湯管・ガス管などの清掃や点検、補修、更新を容易にする対策の程度を、等級で示したものです。

住宅の耐震性や断熱性とは異なり、この項目は将来の維持管理をどれだけ容易に行えるかという観点から住宅を評価するものです。

④省エネルギー性:長期優良住宅の新築認定では原則として、「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」の2つが求められます。

断熱性能等級:住宅の屋根や天井、外壁、床、開口部などの外皮について、断熱性能を評価するための等級です。主な指標として「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」が用いられます。

新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド

地域区分によって求められる数値は異なるものの、長期優良住宅の認定を受けるには地域区分に応じた基準以上の性能を確保することが求められます。

一次エネルギー消費量等級:建築物が1年で消費する暖冷房、換気、給湯、照明などのエネルギー消費性能を数値化した指標です。

等級の判定は「設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量」で算出されるBEI(一次エネルギー消費性能)の指標が用いられます。

新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド,最高等級8

長期優良住宅の新築認定で求められる等級6はBEI0.8以下で、具体的にはZEH基準に相当する水準です。

ですが、私たちは「断熱性能」と「一次エネルギー消費性能」の違いを、正確に理解しておく必要があります。

長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について,断熱,一次エネルギー

それは、断熱性能が「建物外への熱の逃げにくさ」や「外からの熱の入りにくさ」を示す機能であることに対し、一次エネルギー消費性能は、暖冷房だけではなく給湯や照明などの設備も含め、エネルギー消費量を評価する指標だからです。

断熱性能が高ければ、確かに暖冷房のエネルギー消費量は低減するでしょう。

しかし、給湯や照明設備のエネルギー消費量に、直接的な影響を及ぼすことはありません。

にもかかわらず、「この住宅は断熱性能が高いため、電気代が安くなります」と断定的な説明をすれば、トラブルが発生する要因となりかねないのです。

説明をする際には、断熱性能だけではなくエアコンや給湯機器の性能・効率や家電の使い方、家族構成などの複合的な要因で光熱費が変動する可能性がある点についても、言及しておく必要があるでしょう。

長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について,居住環境、住戸面積、維持保全計画、災害配慮

長期優良住宅の認定を受けるには、これまで解説をした以外にも、上記表に記載されているとおり、居住環境、住戸面積、維持保全計画、災害配慮などの措置が求められますが、本稿の目的は「長期優良住宅」の認定基準を一つの基準として捉え、各性能項目について理解を深めることが目的であるため、ここでは説明を割愛させていただきます。

追加で覚えたい「住宅性能表示制度」で特筆すべき項目

前章で解説した劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性の4つを正確に理解して説明できれば、建物の性能に関する説明は問題なく行えるでしょう。

ですが、近年注目されている「住宅性能表示制度」の中にも、覚えておきたい項目や用語があります。

  1. 空気環境に関すること

A.空気環境に関すること

◯ホルムアルデヒド対策:室内の空気には、ほこり、水蒸気、二酸化炭素以外にも、多様な化学物質が含まれています。そのため、ホルムアルデヒドなどの化学物質の発散を抑える対策や、適切な換気を確保するための対策について理解しておく必要があります。

新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド,ホルムアルデヒド発散等級

建材などのホルムアルデヒド発散等級は、JIS及びJASの規格に基づき「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」などと表記されますが、これは、☆の数が多いほどホルムアルデヒドの発散量が少ないことを表す表記で、4つ星が最高等級となっています。

もっとも、エフ・フォースターなどの基準はあくまでも「建築基準法」に基づく建材などを対象とした規制であり、据え置きの家具などは対象とされていません。

一部の家具メーカーでは「F☆☆☆☆対応家具」などを取り扱っているものの、そもそも建築基準法上の規制対象となる建材と、家具などの製品では扱いが異なるため注意が必要です。

筆者は、過去に「F☆☆☆☆建材」のみを使用して建築された新築住宅であるにもかかわらず入居した顧客から、「鼻を刺すような刺激臭を至るところで感じる」と指摘されたことがあり、専門業者へ測定機を使用しての調査を依頼したことがあります。

結論としては、量販店で数多く購入した輸入家具が臭いの原因でした。

新品の家具を複数部屋に置くと、室内におけるホルムアルデヒド濃度が高くなることがあるため注意が必要なのです。

◯換気対策:建築基準法では、室内空気中の汚染物質や湿気を屋外へ排出するため、原則として居室の床面積に対して20分の1以上の換気に有効な開口部が設けられない場合には、自然換気設備、機械式換気設備、中央管理方式の空気調和設備、または国土交通大臣の認定を受けた設備のいずれかを設けなければならないとされています。

建築物における効率的な換気の促進に関する取組事例集

もっとも、平成15年(2003年)の法改正以降は、一定以上の気密性を有する建物については、シックハウス対策として少なくとも換気回数を0.5回/時間、つまり2時間ですべての空気を入れ替える能力を確保する必要があります。

現在の建築基準法下では、それだけの換気回数を安定して実現するため「機械式換気設備(24時間換気システム)」を採用するのが一般的です。

新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド,居室の換気対策,局所換気対策

もっとも、機械式換気設備には3種類の方式があるものの、コスト面の関係から全国的に木造住宅で広く普及しているのは吸気を自然吸気口、排気を機械で行う「第三種換気」です。

しかし、この方式では冬場は冷えた外気を、夏場は暖かい外気を室内に取り込むため、冷暖房負荷が大きくなりやすいのです。

そのため、寒冷地や高気密・高断熱住宅においては熱交換効率や快適性を重視して、給排気のいずれも機械で行う「熱交換型の第一種換気」を採用することが多いのです。

    B.光・視環境

    室内での作業に必要な明るさを、窓から確保することは重要です。

    そのため、住宅性能表示制度では居室の開口部について、単純な採光面積だけでなく、開口部の面積や方位などを評価して表示します。

    新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド,包囲別開口比

    C.音環境

    快適に暮らすためには、「音」に対する配慮が大切です。

    特に、共同住宅においては「音」をめぐるトラブルが多いこともあり、床や壁の遮音性は重要です。

    そのため、住宅性能表示制度では共同住宅に対し、上下階の床衝撃音や隣戸に対する音の伝わりにくさなどが評価されます。

    具体的には、落下音などの「重量床衝撃音」や、スリッパの歩行音や小物の落下音などを対象とする「軽量床衝撃音」、さらには隣戸との界壁における「空気伝播音」について、遮音性を高める対策が評価されます。

    また、戸建住宅と共同住宅のいずれにおいても、外部騒音が室内へ侵入することを抑えるため、外壁開口部の遮音性能が評価対象とされていることについては、覚えておくと良いでしょう。

    新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド,音

    共同住宅においては、「音」を巡るトラブルが多いため、購入検討者は常に「このマンションでは騒音トラブルが発生していないか」「遮音性は十分か」を気にしています。

    その点において、高い等級を得ていることを示すことができれば、顧客の安心確保に繋がることでしょう。

    ただし、住宅性能表示制度における音環境の評価は、設計段階で予測できる性能を評価するものであり、竣工後における実地検査を実施しているわけではありません。

    そのため、「まったく気にならないほどの遮音性を確保している」と保証されたわけではないのです。

    例えば、複数人の子供が室内で走り回れば、少なからず下階に音が響きます。

    それだけに、「重量床衝撃音対策等級が高いから、騒音トラブルは起こらない」といった断定的な説明をしてはなりません。

    設計段階で予測できる性能を評価しているに過ぎないという点を、正しく説明する必要があるのです。

    まとめ

    論語に、「之を知るを之を知ると為し知らざるを知らずと為す是知るなり(これをしるをこれをしるとなししらざるをしらずとなすこれしるなり)」という言葉があります。

    この言葉は、知ったふりをせず、知らないことは知らないと自覚して明確にわきまえること、つまり自分が知らないことを自覚することの重要性を説いた言葉とされています。

    論語を常に人生の規範とした渋沢栄一がこの言葉をよく用いたからというわけではありませんが、筆者も自身を自制する目的で、日頃からこの言葉を意識するように心がけています。

    不動産営業には取引実務のみならず、民法等の関係法令はもとより、税務、各種建築法規、建物性能など広範な知識が求められます。

    それだけに、必要な知識を漏れなく正確に理解することは、並大抵の努力では達成できません。

    日常の業務に忙殺されながら、実務を通じて必要な時に、その都度学び直し、知識を補完されている方が多いのではないでしょうか。

    しかし、不動産取引のプロフェッショナルとして最も注意すべきなのは、理解が不足していると自覚しながらも、もっともらしく説明をしてしまうことです。

    それにより、「説明された内容と違う」といった深刻なトラブルが生じる可能性は高まるのです。

    とりわけ経験年数が長くなるほど、「存じ上げません」という言葉を発するのに抵抗を覚えるでしょう。

    しかし、知識の及ばない質問をされたのなら、知識を深める機会を与えてくれたと感謝しつつ、「申し訳ございませんが、正確に理解していないため確認したうえで、あらためてご回答させていただきます」と誠実に伝えることこそが、不動産のプロフェッショナルとして成長し、顧客から信頼され続けるために必要な姿勢だと、筆者は思うのです。

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    監修者情報

    H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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