【何を質問すれば良いのか分からない】不動産相談サイトから読み解く顧客の不安

【何を質問すれば良いのか分からない】不動産相談サイトから読み解く顧客の不安

インターネット上には、顧客の様々な不動産に関する疑問や不安に回答するサイトが存在します。

PV数の高い専門ページに、宅建業者各社が展開する相談サイトまで含めれば、その数は膨大なものとなるでしょう。

その中には、無料かつ匿名で不動産のプロや士業に直接相談できるサイトもあり、そこへは日々リアルな「生の声」が顧客から寄せられてきます。

もちろん、回答者として名乗り出る必要はありません。

しかし、どのような相談が寄せられているのかを知ることで、顧客がどのような悩みを抱えているかを把握でき、さらには、回答者による回答を閲覧することで、その言い回しや表現、アプローチ方法などを実務や営業現場へ還元できるのですから、時間があれば、是非目を通されると良いでしょう。

特に、Web上のいわゆるノウハウ記事を参照するだけでは解消できない、個別具体性の高い相談については、目を通されることをお勧めします。

実際にこれらのサイトを閲覧すれば、すでに取引中であるにもかかわらず、「第三者によるセカンドオピニオン」を求める声が少なくないことに気が付かれるでしょう。

営業に従事されている皆さんは、顧客から第三者に相談されることを、単に「セカンドオピニオンを求められた」と片付けるのではなく、信頼を十分に得られていない可能性を示すシグナルとして、重く受け止める必要があります。

そもそも、疑問や不安があるのなら、まずは担当者に相談するのが自然だからです。

それにもかかわらず第三者に相談しているのであれば、信頼を得られていない、あるいは説明内容や情報量に問題がある、回答までに時間を要しているといったことが原因かも知れません。

とはいえ、不動産取引に関して必要とされる知識は膨大です。

宅地建物取引業法はもとより、民法、建築基準法、都市計画法などの関連法規、さらには建築や土木、税務に関する知識が必要とされるため、顧客の質問に対して的確な回答をするためには、相当な自己研鑽と日々の情報収集が不可欠となります。

筆者自身、不動産コンサルタントとして顧客からの相談に応じ、物件調査やセカンドオピニオンのほか、「不動産会社のミカタ」へ記事を寄稿していますが、それでも、不動産業界で35年を過ごした現在も、日々学ぶ努力を続けています。

これは、「不動産取引に関して、全てを知っているとはとても言えない」ことを自覚しているからです。

一つを理解すれば、次々と疑問が巻き起こり、それを調べ始める。

結局のところ、学びに終わりはないのです。

ですが、日々多忙な皆さんに与えられた時間は有限です。

学びにばかり時間を割くわけにはいきません。

そこで本稿では、こうした相談サイトに寄せられる様々な「生の声」を3つの傾向に分類し、顧客がどのようなポイントで躓き、何を不動産のプロフェッショナルに求めているのかを、具体的に紐解いていきたいと思います。

「何を質問すれば良いのか分からない」という顧客

不動産に関する相談サイトを閲覧していると、「このような場合、どうすれば良いのでしょうか」「このような条件で、契約をしても問題はないのでしょうか」といった具体的な質問だけではなく、「何から手を付ければ良いのか分からない」といった趣旨の相談も少なくはありません。

これは、不動産実務の現場においてもよく寄せられる質問です。

例えば住宅を購入する場合、まず情報雑誌やサイトで希望条件を満たす物件を探し、取り扱い不動産会社に連絡を入れて内見するのが一般的な流れでしょう。

しかし、不動産の購入は一般の方にとって初めての経験であり、購入の判断に必要不可欠な知見を必ずしも有しているとは限りません。

加えて、「建ぺい率」「容積率」「接道義務」「契約不適合責任」といった専門用語も、馴染みのある言葉ではありません。

それだけに、詳細な補足説明もなく専門用語を交えた説明がなされれば、疑問や不安ばかりが蓄積され、何を質問してよいのかすら分からなくなるのです。

これでは、営業担当者から「何か不明な点はありませんか」と尋ねられても、「特にありません」と答えるしかないでしょう。

とはいえ、住宅の購入は人生における重大な意思決定の一つです。

理解が不足したまま、あるいは不安を抱えたまま判断をしたくないと考えるのは当然です。

そのため、疑問や不安を解消するために不動産に関する相談サイトへ質問を寄せるのです。

まず、購入検討者から寄せられている相談の傾向は、次のように分類できます。

①物件・契約条件等に関する疑問

  • 営業担当者から、「これより条件の良い物件はそうそう市場に出回らない」と言われたが本当か
    【想定される顧客心理:営業担当者の提案を信用しても良いのか】
  • 契約前までにインスペクションを実施したいのに、営業担当者が積極的に動いてくれない
    【想定される顧客心理:自分が求める調査や要望を実施してくれないことに対する営業への不信感】
  • 管理計画認定を受けていないマンションを購入しても大丈夫か
    【想定される顧客心理:将来の資産価値や管理に問題が生じないのかを知りたいが、担当営業に聞いて良いのか分からなかった。あるいは、質問した際の回答が納得できる内容ではなかった】
  • 契約不適合責任が免責された物件を購入しても大丈夫か
    【想定される顧客心理:自分に不利な条件を正確に理解しないまま契約をしてかまわないのか】
  • リノベ済みなのに工事内容の詳細が明らかにされない
    【想定される顧客心理:見えない部分に問題はないのか】
  • 「告知有り物件」を購入するにあたっての注意点
    【想定される顧客心理:どこまで調査して、何を理解したうえで購入判断をすべきなのか】
  • 価格について
    【想定される顧客心理:販売価格は妥当なものか】

このように、質問内容自体はバラバラでも、顧客が知りたいのは「この物件・この条件で契約しても大丈夫なのか」「担当営業による説明を、信用しても問題はないのか」という点に集約できます。

つまり、不動産の専門知識そのものを求めているのではなく、「自分の判断が妥当なのか」を確認したいのではないでしょうか。

②共有名義や権利調整

次に目立つのが、夫婦や親子など共有名義で不動産を取得するにあたっての相談です。

  • 住宅を購入するにあたっての名義は、単独と共有名義どちらが良いのか
    【想定される顧客心理:夫婦それぞれの資金負担に応じた適切な持分を知りたい。また、万が一離婚することになった場合、共有名義であることによってどのような問題が生じるのかを知りたい】
  • 親から住宅購入資金の援助を受ける予定だが、どのような点に注意をすれば良いのか
    【想定される顧客心理:物件を決める前に、あらかじめ知識を得ておきたい。担当営業からの説明では、理解できなかった】
  • 連帯債務・連帯保証・ペアローンの違いと、それぞれのメリット・デメリットについて
    【想定される顧客心理:ペアローンの利用を進められたが、リスクについて説明されなかった。それぞれの違いが理解できていないので、選べない】

これらの相談は、単純に「この物件を購入しても良いのか」というものではありません。

誰が所有者となるのか、誰が資金を負担するのか、将来的な売却や相続、あるいは万が一離婚した際に、どのような弊害が生じるのかといった様々な要素を整理しなければならないからです。

適切な回答をするためには、民法上の権利関係のみならず、住宅ローンに関する豊富な知見が必要とされます。

例えば、単独名義で必要な資金を確保できるのであれば、あえて連帯債務やペアローンを利用する必要性が低いケースもあります。

団体信用生命保険に加入できる、あるいは贈与税の対象とならない、住宅ローン控除を利用できるといった制度上のメリットが考えられる一方、離婚をする際には財産分与や住宅ローンなどの債権に関する問題が生じる可能性があるからです。

住宅の購入を検討する時点で、夫婦仲が冷え切っている状態の方は多くないでしょう。

しかし、将来的に円満なまま過ごせるかどうかは誰にも予測できません。

そして、夫婦関係が解消されたからといって、共有持分や住宅ローンなどの権利・債権関係が当然に解消されるわけでもありません。

そのようなリスクをも念頭に置いて説明しなければならないのですから、容易なことではないのです。

それだけに、融資が承認される可能性が高いからといって、リスクを説明せずに「ペアローンで申し込めば大丈夫です」と安易に提案するのではなく、例えば、「持分については、実際の資金負担との関係を確認する必要があります。

また、単独で融資の承認が得られる可能性があるのなら、あえてペアローンを利用する必要性があるのかどうかも検討してみましょう。

ペアローンは、それぞれが住宅ローンを組むことによるメリットがある一方で……」といった説明をするほうが、顧客の理解を得られる可能性は高いでしょう。

顧客は、必ずしも「融資が通る方法」だけを求めているとは限りません。

「なぜ連帯債務やペアローンを提案されたのか」「ほかの方法と比較して、どのようなメリットやリスクがあるのか」を正確に理解したうえで、自分たちに合った選択をしたいのです。

この傾向は、次の相談でも見受けられます。

③相続・税制

専門サイトへの相談においては、相続や税金に関する相談もよく見受けられます。

  • 相続した不動産を売却したいが、他の相続人からの同意を得られない
    【想定される顧客心理:自分の判断だけで売却できるかどうかを知りたい】
  • 単独で物件を相続したが、遠方で管理ができない
    【想定される顧客心理:管理の負担を減らしたいが、売却以外の選択肢があるのか分からない】
  • 相続放棄について
    【想定される顧客心理:相続を放棄する方法自体が分からない。あるいは、「単純承認」「限定承認」の違いが分からない】
  • 遺産分割協議がまとまらないが、何か良い方法はないのか
    【想定される顧客心理:交渉のしかた、あるいは誰に相談すれば解決できるのかを知りたい】

また、購入時における税金に関しては、「住宅購入資金の贈与」や「住宅ローン控除」に関する相談が多く、売却時については「3,000万円特別控除」など、譲渡所得に関する特例についての相談が多いように見受けられます。

相続に関する相談に回答するためには、物件の評価額はもとより、相続人は何人いるのか、各人の関係性は良好か、遺産分割協議の進捗状況や相続放棄の期限など、まず事実関係を正確に把握する必要があります。

また、問題が生じている場合には、不動産業者が安易に判断や交渉に介入することは避けなければなりません。

紛争性のある案件については、弁護士などの専門家に相談すべき場合がありますし、登記についても司法書士が専門的に扱う領域があります。

私たち不動産業者にできるのは、相談者の状況を整理し、不動産取引の観点から必要な情報を提供するとともに、必要に応じて適切な専門家へとつなぐことです。

これは、税金に関する相談においても同様です。

例えば、「不動産を売却したらどれくらいの税金がかかりますか」と質問されたとしても、取得時期や所得費、所有期間、居住状況、相続の有無などによって、適用される制度や税額が変わる可能性があります。それにもかかわらず、十分な情報を確認しないまま「3,000万円特別控除が利用できるので心配はいりません」などと断定してしまえば、問題が生じる可能性があります。

だからこそ、何でも自分で回答しようとするのではなく、まず何が問題であるかを整理することこそが重要なのです。

そのうえで、自分が説明できる範囲と、専門家に確認すべき範囲を見極めるのです。

相談者に共通しているのは、単純に「知識がないこと」ではありません。自分が何を知らないのか、何を確認すれば良いのかすら分からないことに、大きな不安があるのです。

それだけに、私たちが交渉や説明時に「何か分からないことはありませんか」と質問するだけでは、十分ではないと考えられるのです。これは、顧客が疑問を言葉にできないからでもあります。

例えば、「この点は将来問題になる可能性があります」「この部分については専門家に確認しておきましょう」というように、疑問や不安を先回りして伝えることが重要だと考えられるのです。

これを実現するには、「知識量」だけでは足りません。

「顧客がどこに不安を感じているのかを予測し、その不安を言語化してあげる力」こそが必要なのです。

この力を成長させるには、相談サイトに寄せられる「生の声」を閲覧し、自分ならどのように回答するのかを考えるのが効果的です。

なぜなら、相談サイトを見ていくと、「担当者による説明が不足していた」「曖昧な回答しかしていない」「理解を得られるだけの説明がなされていない」といった傾向が見受けられるからです。

そこで次章では、皆さんが有している専門的な知識を、顧客に理解できる言葉に置き換える方法について考えていきたいと思います。

顧客が理解できる言葉に置き換える

先述したように、顧客の不安は「自分の判断が正しいのか分からない」「何を確認すれば良いのか分からない」ことに不安を感じています。

だからこそ、営業担当者に求められるのは、専門知識だけではないと言えるのです。

例えば、私たちが日常的に使用しているレインズ、路線価、固定資産評価額、契約不適合責任、返済負担率など、どの用語も一般的に使用される言葉ではありません。

したがって、「売主が、契約不適合責任の免責を求めている物件です」と説明したとしても、契約不適合責任とは何かを正確に理解していない限り、不安を覚えるのです。

そもそも、契約不適合責任の免責を求めている理由が、経年変化によって建物が著しく劣化しているからなのか、それとも建築会社による保証や既存住宅売買瑕疵保険など、一定の保証制度を利用できるからなのかによって、説明すべき内容は変わるはずです。

例えば、契約不適合責任について、「引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合、売主が一定の責任を負う制度です」と説明したとしましょう。

用語に関する説明としては正解ですが、おそらく顧客は、「契約の内容に適合しないとは何か」について理解できないでしょう。

なぜなら、この説明は「抽象的な言葉を別の抽象的な言葉に言い換えた」に過ぎないからです。

「適合とはどのような状態か」という根幹の部分を、分かりやすく伝えなければ顧客の理解は得られません。

例えば、住宅であれば雨漏りや基礎の沈下、設備の不具合など、現況報告書などによってあらかじめ告知された不具合を含め、契約においてどのような状態が予定されていたのかを確認したうえで、引き渡された建物がその内容に適合しているかを判断する必要があります。

それだけに、経年変化や既存の不具合について正確に告知し、さらには売主がどこまで責任を負うのかを契約内容で明確にしておくことで、はじめて契約の内容に適合するか否かの判断ができるのです。

したがって、老朽化した建物の契約不適合責任を免責すれば、契約で免責された範囲については、不具合が生じたとしても原則として、売主にその責任を求められなくなるのです。

私たち不動産業者は、少なくとも「契約不適合責任」とは何か、さらには免責を受け入れることによってどのような問題が生じる可能性があるのかを説明する一方で、売主が責任を負わないことが価格設定に反映されている場合には、この条件を受け入れることで価格交渉の材料となる可能性があるなど、顧客側にとってのメリットについても、説明する必要があるのです。

この場合、顧客が求めているのは「契約不適合責任」という法律用語の説明ではありません。

「なぜ売主は、免責を求めているのか」「免責を受け入れることで、どのようなリスクが想定されるか」「リスクを軽減するためには、どのような方法が考えられるのか」「価格面において、どれだけのメリットがあるのか」といった疑問が解消されることで、初めて購入するか否かを判断できるのです。

そして、これらを説明することこそが、不動産営業の「説明力」なのです。

専門知識を有することは、プロフェッショナルとして当然に必要です。

ですが、それだけでは顧客の不安を解消することはできません。

専門的な知識や専門用語を、顧客の理解が及ぶレベルまで要約したうえで過不足なく伝えきる。

これこそが不動産営業に求められる説明力です。

そして、その力をより高めるためには実践だけでなく、相談サイトに寄せられる質問傾向や回答などを閲覧し、自分ならどのように回答するのかを考える習慣をつけることが、近道となるのかもしれません。

まとめ

本稿で詳述したように、不動産営業に求められる「説明力」とは、専門用語を並べたてることでも、都合の良い解決策を提示することでもありません。

顧客自身すら気がついていない疑問や不安をいち早く察知し、それを誰にでも理解できる言葉へ置き換え、「先回りして示してあげる力」にほかなりません。

顧客がセカンドオピニオンを求める背景には、単に知識が不足しているだけではなく、担当者への信頼や説明内容、対応などに対する不安が存在している可能性があります。

それだけに、私たちは多忙な業務の合間に、相談サイトであふれている顧客の「生の声」に耳を傾ける必要があります。

そのうえで、顧客の迷いや不安に対して「自分ならどのように説明し、不安を解消できるのか」を問い続けるのです。

その積み重ねこそが、AIやマニュアルでは代替できない、皆さん自身のプロフェッショナリズムを育む一つの方法となることでしょう。

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監修者情報

H.L.C不動産コンサルティング 奥林洋樹
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